犬のような四つ足で立つ動物は、脊椎から内臓を吊るす形になる。
骨盤には内臓を支える仕組みではありません。
多少の骨盤のずれがある場合でも臓器に対しての直接的な影響が少ないようです。
対して、人間は、骨盤の上に内臓が乗り、腸骨と骨盤底筋により下支えされます。
立位のしかたにより骨盤が正常位置にあれば、腹部コアに小腸が納められ安定します。
上面の横隔膜、下面の骨盤底筋と腸骨、前面の腹直筋など、後面の腰椎を含む背側の組織、左右は腹横筋や腹斜筋、
といった上下前後左右が均一に内圧が生じています。
そうなることで、骨に直接的な付着点という固定がない内臓が自分の位置を定めることができるのです。
ですが骨盤がずれが生じている場合には、臓器がいるべき理想的な位置からこぼれ落ちるような不具合がでてきます。
骨盤が前傾すれば腹直筋等の腹部前面へ臓器が突出し、背部からは腰椎が臓器を前へと押しやります。
骨盤が左右傾斜や左右同時の腸骨の開きすぎ状態などが生じれば傾斜が落ち込んだ方へと臓器の下垂が起こります。
つまり人間という2足で立位をかなえる動物は、
骨盤の状態如何により問題が生じれば臓器が理想的な位置に設置できない構造になっております。
たとえば骨盤の前傾が強く傾きがあるなら、
骨盤底筋に乗り切れなくなった臓器の一部は前側の腹壁に突出して骨盤の力で支えを受け取れなくなります。
すると影響として腹部の前後の圧が過剰となり、その過剰さが高まれば臓器の下垂が高まるような骨盤の左右屈がでてしまい、
結果として内臓下垂の影響から臓器の下部に位置する直腸や膀胱、
女性の場合には内性器などに強い圧迫などで問題がでてきます。
またはみぞおち部分は、臓器が下垂したため空虚な状態になって
腹満(ふくまん)とよばれる膨らみ張った状態や、
みぞおちを押すとごぼごぼと水が移動する水分代謝の異常がみられたり(胃内停水)。
臍下悸(さいかき)、臍上悸(さいじょうき)、心下悸(しんかき)などといわれる
腹部の特定場所を触ると大動脈に触って脈圧が外部に漏れることがあります。
それぞれ臍の部位やへそのちょっと上、またはみぞおち部分に強い脈動を感じます。
また左右屈でたとえば右側の腸骨のみが大きく前傾すると
左側大腰筋が緊張著しくなって苦痛を伴う張りが現れてきます。
その他、骨盤がずれたことにより様々な影響が内臓に対し
構造的な負担が強いられることで発生することとなります。
・・・というように、
骨盤の前傾や左右屈などにより生じる内臓の症状のあらわれ方を便りにして、
その方の骨盤の傾斜度合いを推察することができます。
前出した犬などの四つ足動物では、
このような明らかな骨盤のずれと内臓の異常の相関が明瞭には視ることができないでしょう。
それゆえに、二足立位および二足歩行をするようになった私たちにとって、
骨盤が内臓のコンディションを大きく影響させる要素であると考えられており、
注視して分析をすべきところだといえるでしょう。
人体は骨盤の状態が、ダイレクトに内臓の健康に響くデザインになっているのです。
そういう眼で内臓の問題個所を観れば、骨盤のずれをどう調整すればいいのかもわかってきます。
もちろん内臓自体の器質的な問題があるというときは、骨盤のずれ云々ではありません。
ですがすでに医療機関にお腹の不調を訴えて検査をしたが異常がないというようなとき。
骨盤のずれを調整して内臓の理想的な積み上げをなされるようにしていただく施術を試していただければ、
状態が改善なされることがあります。
骨盤のずれから生じた腹腔内の理想からの乖離状態によって内臓への物理的な負担がでたときは、
骨盤の内臓を支える作用が構造上の弱化により問題を引き起こしていることとなります。
そういった場合、なかなか漢方等の方剤をもちいても改善しづらい傾向にあります。
そういったときには東洋医学でも鍼灸や按摩のような物理的な人体の構造を変化改善させる
アプローチを積極的に対象として施していくように分けて考えておられます。
そうすることが改善がなされやすいケースもあるということを記憶にとどめていただけましたら幸いです。