体の使い方の記憶

体の動かし方は、
半自動化されている。

たとえば立つときに「どうやって立てばよかったのか?」
と記憶をたどる必要はありません。
体の中の記憶装置が自動的に発動して、
何も考えなくても立ち上がれる。

このときの記憶システムは、
短時間行った動作と長期間行った動作と違いが出てきます。

短時間行っただけの動作は、
脳内で『電気的なメモリー』に記憶されるだけ。
コンピュータのRAMのようなシステム。
電源を落とせばその情報は消去されます。
だからその動きを手放すのも楽。

長期間繰り返し続けた動作は、
脳内で『化学的プロセス』によって記憶されます。
コンピュータのハードディスクに記憶されたデータのようなもの。

小さい頃から繰り返された動作の場合は。
それはコンピュータで言えばROMメモリー
ハードディスクよりも書き換えが困難なもの。
一生そのROMに引きづられることもあります。

何度も繰り返し行った動作は化学的プロセスに記憶されます。
それを取り去るためには、
今行っている動きの不都合な点を理解すること。
そしてより優れた改善された動きを身につける。
『新たな化学的プロセスづくり』に取り組まなければなりません。

運動で作り出した体内の癖を軽減させる。
これは『新たな化学的プロセスづくり』の促進に一役を担います。
癖はしこりなどの形で存在していることも。
これを『癖のない状態にリセット』します。

そのメリット。
・古い化学的プロセスを再始動させるリスクが低下できる
・新たな化学的プロセスを身につけやすくなる

癖のない状態にからだがリセットしてから動きを学ぶか、
すでに体内に内在する癖を残したまま動きを学ぶか。
改善の成功率は前者のほうが高い。
後者は一定の成果を獲得まで遅々とします。
せっかちであれば途中で挫折する。
たいていの方はそんな経験をしているようです。

ヨガやボディワークでしこりを解いておき、
体の癖を抜いてから動きを学ぶことは遠回り。

ですが体の中の化学的プロセスにまで到った動きを書き換えるためには、
有効な手段として利用価値があります。

急がば回れです。

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体の使い方の[再教育]の奥深さを知る方は、
上記の話をするとうなづいてくれます。
体の使い方の改善に幾度も挫折を経験し、
厳しさを悟ったときにうなづけるのです。