脊椎を挟んだ拮抗筋を調整するときの鉄板ルール

下図に中心軸を支える左右ロープがある。

拮抗するロープ.png

図(a)は、
中心軸が垂直に立つよう左右ロープの張力は均等に張られている。

図(b)は、
中心軸は右に傾斜し、左ロープは引っ張られて張りが強まりこちらで中心軸を支えている。
右ロープは、たわんでゆるゆるだから中心軸の支える力にはなっていない。



このような状態が、体内にある左右拮抗する筋肉に対し同様なことが言えるのです。


意外にカラダの左右に対象になって位置する筋肉って多いですよね。
そうではないといえる筋のほうが珍しいといえるほど。
特に脊椎に直接付着点を持つ筋肉のほとんどは拮抗筋ですね。

そんな筋肉のひとつの例をあげてみましょう。
たとえば、昨日のブログで以下の図を掲載させていただきました。

大腰筋と腎臓.png

上図の大腰筋を観てください。
それは既出した(a)の中心軸の図に類似してますね。


では大腰筋が描かれた図の脊椎が、
(b)のごとく傾斜したらどうなるでしょう。

そうなると左右の大腰筋の緊張側と弛緩側は、
● 右大腰筋が緊張側
● 左大腰筋が弛緩側
です。
(※この設定は脚部が左利き、少数派のパターンとなります)

この場合、触診すれば緊張している側の右側大腰筋が硬化していることがわかります。


ならば右側大腰筋を解くことで緩ませていけばいいのでしょうか?


直感的にはそうしたくなるのはわかります。
でも、ちょっと待ってください!

図(b)の張りが強くなって伸びたロープを緩めるだけ緩めたら何が起きるかを考えれば、
なにかおかしなことになりそうだとわかるはず。
張りが強くなったロープの張力で中心軸の傾斜をおさめているのだ。
そのロープの引き張り張力を緩めたなら中心軸の傾斜はさらに増すようになるわけです。

それと同様なことを、人体内部の大腰筋でやってしまったら、
右側大腰筋が硬いのは脊椎が左側に倒れているわけです。
それを支える右側大腰筋が身を挺して固まって脊椎の傾斜度合いを低減させる操作を無にすれば、
脊椎はさらに左側への傾斜が増すんですね。

そうなれば腰椎椎間板の一部にかかる過剰な負担はひどいもので、
問題が深刻になっていくことも想像がつくでしょう。


だったら右側大腰筋の硬化は放置すべきでしょうか?

もちろん、見過ごしておいてよいわけはないのです。
この大腰筋の悪いコンディションがあれば、
呼吸にも、腎機能にも、足の運びにも、精力にも、内臓の位置ずれにも、さまざまな悪影響を内部で引き起こしているんですから。
きっちり通常の大腰筋のあるべき正常な状態になるよう、
小転子部分からみぞおちうらの胸椎10番付近の奥の部位まで数センチ単位で全部チェックして、
問題を見つけて修正を加えていきます。


ただ、このような硬化した側の筋肉を弛緩させれば中心軸の傾斜が増してゆがみが強まるわけです。


だから施術者は、同時にお客様にはさほど痛くもかゆくもない手技を、かならず施すものなのです。

この場合には、左側の弛緩したわんだ大腰筋にしているんです。

筋肉のトヌース(筋の長さ)が左側大腰筋は見失っていますから、それをそのままにしておいても、
自動で修正がなされることはありません。

だから施術中に実際には目立たない手技操作で弛緩してたわんでいる側の大腰筋の筋肉の張りとして機能させる長さを思い出させるよう、
ささっさっと大腰筋の腱部を含め刺激をいれるておくんですね。


この操作をすることで、はじめて図(a)のような状態に脊椎を立たせられるのです。


なので、左右拮抗する筋がある部位に片側に筋肉の硬化があることが分かったとすれば、
そこをリリースすると同時に、対になるたわんだ筋側のトヌースを思い出させるよう神経に刺激をいれることをします。
それが拮抗する筋肉の調整するルールです。



ただ単純に固まった筋肉部位のほうがいたかったり張って不快だったりするためお客様には主訴として訴えられるのですが、
ときどき弛緩側の筋が虚脱が進み過ぎて、仕方なく拮抗筋が硬度を強めて炎症がひどくなっているというときもあります。
それは慢性で起きる痛みの様子では散見されるのです。
そうしたときにこわばりを強くしてどうにか軸を支えてしのごうとしているわけで、
そこに不用意に触ったら、その軸のくずれは致命的になりますから。。。
通常はそうであると見立てたら、虚脱した弛緩側の神経を正常機能させる手技を先にいれておきます。
そうすることで拮抗筋の硬化はすでに半減し痛み等の深いも消えるか半減するわけです。

拮抗筋をどうみたてて、どう処理してさばいていくのか。
その瞬時の経験に裏打ちされた直感がものをいうこととなります。



ちなみに、大腰筋の左側が硬いように思うが、これを解く方法はないか?と質問を受けることも時々あるんです。
解き方としては、オステオパシー系手技のカウンターストレインのやり方がもっともやさしく負担がかからない。
ですからそちらをお勧めすることがあるのですが、
「あまりやりすぎないようにしてくださいね:ほどほどくらいがちょうどいいと考えてくださいね」
という理由は、まさに、上述させていただいた理由。
拮抗した筋がたわんでいる状態が進んでいたらこちらのトヌースを復活させるよう神経に刺激をいれるんですが、
そのやり方はけっこう精妙で何年か施術をたしなんでいただかないと意味が分かりづらいものなのです。
軸ずれが増すような問題がおこらないよう施術の場では私がそれをしていますので大丈夫です。
ですがそれをせずに硬化した拮抗筋の一方の筋のみを解けば、その片務的な操作は軸ずれをしょうじさせるのです。
そのために起きるダメージがでてこないていどに緩めに大腰筋を解く感じでというように、
お客様にそのリリースをなさるときには言葉で必ず付け加えるようにしています。


施術には、実際、大きく刺激をいれていく筋肉への物理的な操作をおこなう場合もあれば、
振れたかどうか、または触れもしないで神経系の部位に修正を加えているときもあります。
どちらかといえば一般の方には前者の操作が手技のイメージになっていると思いますが、
同業者の方が施術を受けているときには触れたかどうかの神経系といえる修正に興味を持つ方がいます。