大腰筋の内臓部分への影響力

bodywise2008-12-26

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大腰筋はバレーダンサーや各アスリートが
軽々と足を持ち上げるほどの強力なパワーを秘めています。
強烈な筋力を発揮させる偉大なコアの筋肉といえるでしょう。


右利きの人が利き足の右脚部の大腿直筋や外側広筋ばかりを使うなら、
左右脚部の筋肉量に差がでてきます。


具体的に言えば、
右側の大腿直筋や外側広筋や腸脛靭帯や臀部筋群が硬化するし、
左側のハムストリング関係の筋肉群が硬化してしまう。
脚部の上に位置する骨盤も歪みだします。
右側腸骨前部が下降してゆがめられると、
腰椎もそれにならって傾斜をしてきます。
その傾斜した大黒柱を支えているのが、
右側の起立筋群と左側の大腰筋。


これなどは人体の立体モデルが頭に入っていれば、
『当然そうなるよね』という物理的問題で
なんの不思議なこともないです。


ただ自分の体の奥で自動的に起きてしまう現象です。
そのようなゆがみが自分にも起きているかどうか気づけないだけ。
でもよほど体のバランスが整った人でもない限り、
多かれ少なかれこの右利きの人ならば左の大腰筋が硬化するのは見られます。
(注意:左利きの人は逆に右の大腰筋が硬化傾向となります)


大腰筋は内臓部に隣接する強力な筋肉。
左側大腰筋が硬直かつ萎縮することで、
その周囲の臓器を牽引し引きつらせる。
胃やみぞおち部などの不快な症状や
腰椎椎間板狭窄などの影響も起きる。


へその周囲がひどく硬くなります。
それが消化器に不調を与えますし、
女性ならば内性器にもダメージを与えます。
左側の内臓部は左側大腰筋の強烈な圧迫で
圧縮を受け臓器の過度な密着による代謝不足や臓器の癒着が始まる。
具体的には左側にある脾臓や胃や大腸や小腸や左側腎臓や
内性器に問題が生じることもあるようです。
左側の卵巣や卵管が大腰筋に癒着することで、
必ず左側から排卵するときに強い生理痛になったり。
左側横隔膜が引きつれて腹式呼吸がしにくくなります。



表層筋は外傷から免れようとして、
痛みを感じ取りやすいよう痛覚神経が発達しています。
しかし大腰筋のような強力に全体が萎縮して酸欠に陥るような深部筋は
痛覚が鈍くなりやすいようです。
そのために本人の感覚では、
ちょっとへその隣辺りが引き連れるような痛みやつまりがあるな、
程度しか感じられません。


ただ酸欠して痛覚が麻痺した大腰筋を緩めて酸素を含んだ血液を
正常量取り込めるようになると初めてそこに強い炎症があると気づく。
それまでは触られても硬いな程度しか感じない。
それは痛覚神経が働けないほどの状態であったとわかるほどの
痛みが襲ってくることもしばしば。


これほどの硬化状態では自力で緩むことはあまり期待できない。
それはすでにその炎症を持つ筋肉は血行悪化で酸素量が足らず、
冷えているため自らの癒着化したしこりを溶かす力が弱いから。


痛みを感じるとその部分に脳から血液を送り込んで治癒を促すが、
痛みのサインがないなら重要な資源である血液を送るなら意味がない。
痛みを感じていたときは自然治癒が進行しやすいが、
痛みが麻痺したらそこより痛みを感じている緊急性が強いと思われる
部分に手厚い保護をしようとする。
限りある血液資源は現在痛みを感じる部分に多く流れる。
そういったことのようです。



大腰筋の内臓に与える影響力を考えれば、
痛覚の麻痺を起こしたとしても修復して欲しいものだが。
だが残念ながら麻痺を起こせば、
大腰筋の硬化は内部で気づかぬ間に強まる。



たとえばオステオパシーの技術では
カウンターストレインなどの大腰筋をやさしく緩める方法があります。


幼い子供ならば修復は比較的楽です。
数回の施術で劇的な変化を呼ぶこともしばしば。



ただ長年かけて蓄積した方の大腰筋の負担は著しい。
一筋縄でいかないケースも多い。


大腰筋は脊椎を立てる要の筋肉でもあるため、
左側大腰筋が脊椎の大黒柱をゆがます。
大黒柱を見失った体はどうなるでしょうか。
様々なつっかえ棒を体中にしこんで支えにかかる。
そのつっかえ棒は筋肉を硬化短縮させて作るので、
いたるところにその大腰筋の影響が波及していく。


これが実に広域に渡るのです。


ただ影響の波及パターンというものがあります。
私どもは日頃からそれを観察して対応してます。
ここの見方の深さが施術に反映できるかどうか。
そこは本当に難しい奥深い世界です。


大腰筋の状態が改善していき、
大腰筋を誤用しないような使い方を得れば、
今までの不具合がずいぶんやわらいでいく。
そのような体験をする方々は多いのです。


意外に大腰筋の硬化による内臓ダメージって、
盲点だったりするんですよね。