病には病態の変化と病が他に波及することもあります

 

疾病が発生するに至った経過やそのメカニズムのことを(病機)といいます。
病態が他の病位に伝わったり、他の病態に変化したりすることを(伝変)といい、
他の病位に影響を及ぼしたり、複数の病態が合わさったり、または同時に存在するなどの状態を(波及)といいます。

テキスト「新版 東洋医学概論」のP178では
フローチャートで図示された《基礎病態と関連する伝変と波及の例》が解説されています。
図では(気虚)の悪化から端を発し病態が変化する様子が描かれて、
じっくり疾病の起こりや病理物質が出来上がる流れも読めてきます。
書籍の一部のコピーを転写するのは著作権の侵害になりそうですし、
そこを割愛させていただきますが、
中医学系YouTuberの円龍氏がYouTube映像でわかりやすく解説しておられます。
「新版 東洋医学概論」P178の
フローチャートで図示された《基礎病態と関連する伝変と波及の例》を
円龍氏がフローチャートを矢印を付してさらにアレンジなさっておられます。
中医学を学ばれている方には、非常にわかりやすく解説してくれております。
ぜひ、ご視聴いただければ幸いです。

https://youtube.com/watch?v=9VxNzyulmAY&si=LYu84KWEA8ofSnau



他の肝・心・脾・肺・腎の系統をあわせて
私は10回ほど繰り返し視聴し覚えました。
病態の伝変や波及を図示して覚えることで
病態の全体を鳥瞰してどの位置にいるかが理解できるようになります。
勉強したてのころでしたら病態が出てくる都度に覚えていたときには、
それぞれの病態の関係や関連が希薄で、別物にしか思えませんでした。
ですが《病態の伝変や波及を図》を繰り返し観ていくと、
病態が進む道や脇道が把握できて時系列上の変化がわかってきました。



たとえば、書籍内図《基礎病態と関連する伝変と波及の例》を参照し、
映像内のフローチャート内にある(血瘀)に着目すれば、
以下の4ルートがあるとわかります。

気虚ルート(気虚血瘀)
血虚ルート(血虚血瘀)
・陽虚ルート(寒凝血瘀)
気滞ルート(気滞血瘀)

なんてスッキリと見て取れるのだろう!!




血瘀は、体内で生成される病理物質のひとつで、
血瘀から腫瘍へと変わることがあります。

そう考えれば、
上述した重い病になる前の血瘀の生成に至る前の段階にある
気虚血虚、陽虚、気滞
が進行しすぎる前に引き返せば、
次の段階の血瘀が生成されず安心ですね。

これが【未病先防】といった考え方です。
気虚血虚、陽虚、気滞)の初期段階で戦いを圧倒することを勧めています。
血瘀が腫瘍化してから戦うこともできますが、
その戦は味方にも大きな被害が及ぶものです。

たとえが適切ではないかもしれませんが、
初期段階でこちらから戦を仕掛けて大きく損傷せずに戦いを勝利し終えるのです。
この時点での戦いなら自らの肺・消化器といった組織を大きく傷めずにすみます。

なぜそうしたいかというと、
病との戦いが起きた戦地は、
自身の身体の内部だからです。

大砲を発射して自身の身体を焼け野原にして勝つこともできますが、
それでは勝っても復興に多大な苦労がともないます。

だから戦い方としては、
大砲で病邪を一掃するのではなく、
ウイルスや細菌といった邪気を
個別に弓で射殺すゲリラ戦法をとります。
戦が進み疲弊する前で体力が未だあるなら、
(自己の免疫)など兵隊の活躍が主流です。
薬膳や漢方薬などにより免疫強化策をとり、
援護射撃をして差し上げることができます。

ゲリラ戦法で戦えばちょうどいい時を逸してしまい、
血瘀の凝固が進行して腫瘍化が著しい戦況となれば。
大変な苦労をともなう治療をなさることで
戦いを挑まなければなりません。



「(気虚血虚、陽虚、気滞)の初期段階で
  対応をきっちりしていきたいのは山々ですが、
  そんな都合いいことなんかできないよ。
  どうやったらいいものなの?」
という気持ちになることがあるかもしれません。
少なからず理想と現実のギャップは、
このような場面でもあると思います。



ただ、ひとつだけ考え方として、
体質改善という手はあります。

気虚血虚、陽虚、気滞)は、
急性で生じてそうなることもありますが、
慢性化すればそれを体質と呼ぶのです。

気虚血虚、陽虚、気滞)が慢性化して常態となれば、
気虚体質
血虚体質
・陽虚体質
気滞体質

と呼ばれます。
こうした4タイプの体質を持って居れば、
注意深く血瘀を育てない回避行動を取り続けたいものです。
そうでなければ、腫瘍化はしやすいタイプと考えてください。



かくいう私は(陽虚体質)ですから、
陽虚体質の悪化度が進行して身体の気エネルギー不足が
増加すれば身体が冷えが芯から起こり、
血を寒さで凝固させてしまい血瘀をこさえてしまいます。
加齢して腎陽虚が生理的に進行していくことを考えれば、
いままでの冷えが、さらに増していく傾向は否めません。

黙って今までと同じことをしていたら、
精は減じられ病を得ても感度が鈍って
気づかないうちに進行してしまいます。
とてもやっかいです。


そこまで未来予測が立っていれば、
不退転の陽虚体質の体質改善が必須です。