『活血』は、
漢方薬では「活血化瘀」ともいいます。
どういった活躍をするかといえば、
・血行不良を改善する
・血行不良によってうまれた血の塊を治療する(がんや血腫のこと)
という2つですね。
では血行が悪くなる原因に基づいた対策とは、どのようなものがあるか?
(1)和血
(2)行血
(3)破血
に分類されます。
【和血】
・血液の量が少なくて、流れがちょぼちょぼになることで瘀血をつくったから。
こうした血虚体質では、血を補うことで血行を改善します。
ストレスにより気の回りが停滞し血流が悪くなったから。
身体の冷えによる血行悪化から。
これら血行が悪くなっ原因を改善して血行をよくすることを【和血】といいます。
【行血】
・狭められた血管を拡張してうっ血状態を改善し血流をよくすること。
(川芎・丹参)
【破血】
・血管を拡張する他に、血の凝固に対抗・凝固した病理物質(がんや血腫など)を分解吸収する作用で、頑固な瘀血を改善する。
作用は強く激しいものです。
対応に際し、より強い順番は次のようになります。
(1)和血 <(2)行血 <(3)破血
私の独断ですが、
「和血 」は健康状態がそれほど損傷していないときにもちいられ、
「行血」はがんや腫瘍を防ぐ効果を期待するもので、
「破血」は意図的な抗癌作用をも視野に入れた対策となります。
実際には「破血」は不妊症の治療でももちいられることもあり、
抗癌作用を主たる目的と据えたものではないのかもしれません。
2018年頃の私は、
とにかく「破血薬」となるハーブや処方をかき集めていました。
アーユルヴェーダではこれをもちいる、西洋ではこれだとか。
それを調べてはサンプルを収集するようにしていました。
いざというとき頼れるものを調べたかったからです。
がんは、男性が2人に1人、女性が3人に1人といわれる時代です。
瘀血体質や痰湿体質の方々は、血流を阻害しやすいため、
がんや腫瘍をえる確率は上記以上に高まると推測されます。
そういった理解があるなかですが、
中医学を深く学ぶ機会を得て、
頼れる「破血薬」探し以前に、
やっておくべきことがあるよう思うようになりました。
がんになる方は粘着性のあり血の流れを阻害する痰や、
血瘀と呼ばれる血が変化した病理物質が体内で生成されます。
それらが血管内または血管外から血の通り道を狭めてしまい血流を阻害し、
がんの住みやすい場を作り出します。
その場を足がかりとしてがん細胞の増殖が始まるケースがあるのです。
だから「破血薬」をもちいて血流阻害因子となった血瘀を分解排除していこう。
そうしたイメージが成り立つことは納得できます。
ただそうした血管を外部から圧迫して血流阻害因子となる痰は、
脾(消化器全般)が働けないときに痰を生み出す源となります。
血瘀を作り出す場合も、基本、血虚となり血が足りないときは、
脾が血をつくる作用を正常に働かせられていないからなのです。
シンプルに考えてみると、
脾が弱ってきた余波から痰や血瘀をつくりだされるのです。
だったら脾を立て直すことができれば、
病理物質である痰を作らず、
血瘀の影響も浅くなります。
そういったことに気づいたときに、
施術を受けに来てくれたお客様に、
「脾を活性化しよう!そのためには◯◯などを摂るといいよ。
特にポタージュにしたら最高さ!」
と言い始めたわけです。
実は漢方の処方でも、様々な複雑な症状が絡み合ったときに、
どこから手を付けていいかわかりかねる場合がでてくるとき。
とる手立てが{補脾}なんです。
脾を補うことから初めます。
そして薬膳の考え方のベースも、
まずは脾が活躍できるような食事をお腹に提供することから、
底上げをはかろうという意識があります。
これはある意味、
脾を健やかにする食事とは、何度も繰り返しおこなえる病理物質の対策となります。
四君子湯という漢方薬があります。4つの生薬で構成され、そのいずれもが繰り返しもちいても身体を害することはなく強めてくれる君主のようなものといわれ、君主の君をいただく漢方処方がこの漢方薬です。
繰り返し用いるほどに健康を増強してくれるもの。
抗癌作用をイメージする破血薬は、ここぞというときに用いる頓服とするべきものです。
君がつく薬とは異なり、常用して身体を強めてくれる質のものではありません。
両者ともに状況において大切欠かさざるものです。
ただ抗癌作用を必要とする治療を受けるときにも、
脾への心づくしの気配りはできます。
等々を考えるとき、
脾を補うことの重要さを痛感するようになりました。
そうしたところの意味を汲み取ることで至ったのが、
薬膳の研究でした。
実際問題として、破血薬の名前は知っていても、
脾を補う薬膳素材の名前を調べて言うのは容易いが、
料理として作って食べ続ける、食べ合わせをためす、
などといった正面から腰を据えて取り組むことが必要です。
と、とりあえず、本日は中華街食材店で
十全大補湯を構成する生薬を買いだして、
そちらをつかった鶏鍋をつくる予定です。
ちなみに十全大補湯には気血両虚を補う方剤で、
脾(消化器全般)をよくすることで気血を補うと理解してください。