免疫は「肺」と「脾」の2つが大活躍

外から身体内部へと入ってくる細菌やウィルスを、中医学では外因の邪気(=外邪)のように呼ぶことがあります。

とある呼吸法の先生がいってたんだよ、と先日知り合いの施術者さんから
「免疫力発揮は肺だ!」という勢いのいい声を聞きました。

確かに、肺は免疫の要のひとつです。
ただ呼吸法が大事と念押しをしたくって、
<肺をクローズアップしすぎ>て他を語っていなかったようです。

実際、人体の体内に入る侵入経路は、鼻と口。
それらの侵入を拒もうとする役割分担として、
鼻から入ってくる外邪には「肺」が免疫でブロックし、
口から入ってくる外邪には「脾」が免疫でブロックします。

なので「脾」という部分も、
免疫で強力なブロックをかけているんですね。

「脾」が正しく働くには、「脾」自体が気や血を生み出す源であるため、
それをかなえるよう以下の2つの要件があります。

・飲食物が正しいこと
・脾の運化作用(※)が正常であること

(※)「運化作用」とは、東洋医学における「脾」の重要な機能の一つで、飲食物を消化・吸収し、体に必要な栄養分(水穀の精微)を作り出して全身に運ぶ働きを指します。この作用が正常に働くことで、気血が生成され、全身の生理活動が維持されます。

脾の運化作用が生み出した気や血に免疫が関わるわけです。


「飲食物が正しいことは、当たり前じゃん」といえるようなことでしょう。
私も同感です。
ただ人により正しく栄養あるものを食べたくとも、長夏の食が細くなる時期は食欲が減ることもありますよね。
すると脾が働きが弱り気血の生成が追いつかず免疫がひ弱になる。そんなときに口から入った勢いのいいウイルスや細菌がやってきたら、腹痛や消化器全般の働きが落ちるなどの被害を受けるわけです。
そうして夏風邪もひきやすくなるわけです。
【夏風邪のときは:薄荷3g、緑豆30gを煎じて服用するといいでしょう】


私がいま、勉強に取り組んでいる薬膳による食養生は、こうした「脾」におこるトラブルを各人ごとの体質に寄り添って飲食物が正しいものを提案して体調管理をバックアップする役割を果たします。


体質を変えたい方には、
ここからが大事なところかもしれません。
「脾」の2要件が揃わなければ、
「脾は生痰の源」といわれます。
痰とは、口からぺっとだす粘液をイメージされることでしょう。
ですが「脾」が2要件が揃わず作る痰は、
さらに範囲が広いもので体内のネバついた物質が痰とされます。
たとえば、
「脂肪」も痰ですし、
「腫瘍」も痰です。


痰は、鍋におかゆをつくるとき、
熱し方に似ています。
熱し方が浅ければさらさらしたおかゆもありますし、
熱し方がグツグツしたら蒸気が揮発しおかゆの水分の多くが揮発しねばつく感じになりますよね。

「脾」により、
適量に熱されたら血はさらさらで正常ですが、
過剰に熱せられた血は粘度が高まります。
血の内部にあった組織が固形して化けることで、脂肪や腫瘍などを生成してしまうといわれています。
<悪性腫瘍>のことを中医学では<血の病>といいます。
いままでのお話で、そのことがなんとなくイメージできてきた方もおられるかもしれませんね。

つまり【脂肪や腫瘍といった痰が生成されたというのは、
血を生む(脾)が正常な活躍ができていない】といえる状況だとわかります。
だから中医学では腫瘍を検査で見つかれば(脾)を補助するための補脾という対処をいれていきます。

ただ脾の免疫力が落ちた上で腫瘍が生成されることを把握した上で、
では、{日頃から(脾)を大事にしていけばいいんだね}という習慣を持つこと。
より具体的に言えば、専門性の高いアドバイザーから各人の特別な個人差を見積もった助言や指導を定期的に受けとっていただくことで、
未病で対策可能となるのではないでしょうか。

 

といったことを、私は考えています。

なので文頭に呼吸器が免疫だというのはうなづきますが、同時に脾が痰を生み出さないようコントロールすることを鑑みると、こちらの脾の免疫も侮るようなことなかれ。

そう、突っ込みたくなりますね。

ですがこれは各々、人にわかりやすさを優先した説明をするとき。
それは事実じゃないと知りつつも、
印象に残って覚えていただきやすいように
話の要点を絞る取捨選択をかけることは誰でもいたしますから。
察するに、そうしたお話だったのでしょうか。