「人体に多い変形モデル」を覆したものは・・・

“変形/痛み”の治療革命!筋膜療法/Fa・ther』という書籍のp68に「人体に多い変形モデル」という解説図がある。


この図はとても参考になるんです。
体のゆがみがある方の多くの方がこの図のパターンを内在しているので。


p71に「人体に多い変形モデルの胸郭断面」という図があります。
そちらをみると”右側後部胸郭が後方に膨隆している”と書かれています。
脊柱に側弯などのゆがみがある右利きの人を観察すればほぼこの通りです。
私もなんでこのようなパターンが起こるのだろうかと
片側の筋肉の動きの常用が過用になったときの骨格への影響などを考える。
その影響は「風が吹けば桶屋が儲かる」といえるほどのけっこう複雑なもの。
でも丁寧に観ていけばそうなるだろうと素直にうなづけるのです。


ただ例外もあるのですね。


ワークをさせていただいているお客様で異なった様子の方がおられました。
お客様の日常動作や右利きなどの要素から考えれば
”右側後部胸郭が後方に膨隆している”はずなんです。
でも実際には
”左側後部胸郭が後方に膨隆している”のです。


明瞭に左側胸郭が後部のみの膨隆だけではなく前部も膨隆しています。


「昔は左利きで右利きに矯正したわけではないですよね?」とか、
「なにかで左側の腕や肩を使いすぎてはいないですか?」とか、
さまざまなことをたずねました。


なんでこのようなことを聞くかというと、
右利きで右肩が持ち上がり右胸郭後部が膨隆しているならば、
それだったら右利きでものごとを対処するのを控えていただくしかない。
なので左側の手足をちょっと意識してたまに利用するようにして、
左右の手足の利用頻度を50対50にするようがんばりましょう!
となるのです。
そうした努力をしていただければ右胸郭後部が膨隆を解いて平らにすれば
再度また右胸郭後部が膨隆させて胸椎をゆがめて呼吸器や心臓にかかわる循環器に負担を強いることがおさまります。


このお客様が左胸郭後部が膨隆した理由がわかれば対処もできるでしょう。
なぜこのような変位が起きたかがわかれば
再度また胸郭が膨隆しないようにしようと考えられるわけです。
でもそのようになった原因がわからずに解かれても
すぐに解く前と同じような膨隆を起こすような体の使い方をされるならば。
また左胸郭後部が膨隆起こります。


つまりいったん筋膜を緩めて体のバランスを整えたとしても、
体の骨格をゆがめる使い方のパターンを変えないと
時期にまた以前と同じゆがみを生じさせます。
ゆがめられる速度は徐々にかまたは急速にかは様子により異なりますが。
筋膜が緩められて身体の感受性が高まったときは新たな体の使い方を
習得し改善していく好機です。
その機を逃さずに少しでも体の使い方の誤用からくる
骨格の並びの狂いや筋肉の柔軟性低下が少なくなるようにしていきたい。


でもさすがに私がなんでそうなったのだろうかと読めない状態では
適切なアドバイスもできません。


心の中でつぶやいていました。
「これは困ったぞう・・・。
解いてもまた同じ膨隆が繰り返されるのでは終わりがない。
ご本人が自分の体の責任をしっかりとろうとする人だから
ちゃんとしたアドバイスをいえば聞き入れてくれるのに。」


私の頭ではいくつもの可能性を計算していって仮説をたてて
解答を探ろうとします。


そのときに助け舟がやってきました。


詳細については申せませんが
お客様の10年以上前なさっておられた職業が、
体をねじって左側の胸郭部位に緊張を走らせて固定させていたことがあった、
とのこと。


そして当時なさっていた職業での姿勢を再現していただいた状態を見ると、
それならば左胸郭が膨隆するのはうなづけますという感じでした。
体を窮屈にねじり倒しつつ小指の先よりも小さなものに意識を集中する。
精神的にもかなりな緊張状態が強いられる職場でしょうから、
深く呼吸をすることもできず浅い呼吸でいたはず。
そのような緊張状態を長時間強いると一生モノのゆがみができやすいのです。
すでにその職業を辞していたとしても、
当時の筋肉を作動させるための体の中にできた手続きパターンは
無意識の領域で受け入れられて繰り返されます。
運動神経の支配をされているといってもいい。


そのようなときは、
「あっそうか。
もうその職業をやめちゃっているから、
そんな姿勢をとる必要なんかないんだ。」
って気づけるかどうかが大切なんです。



もしこちらのお客様が当時の緊張を強いられていたのが
パターン化していたのが原因の一部であったとしたのなら、
自ら思い出していただけたおかげで、
もうそのときの姿勢をとる必要もないと思えるかもしれない!


もしそうであるならば、
私がしっかり左側胸郭後部の膨隆を解くことで、
よりついた肋間筋をリセットして正しい姿勢を
伝え練習をしていただければ再度膨隆するのを
ずいぶんと防げるはずです。




すでに現在の自分にとって無意味なことをしていたと気づく。
以前勤めていたときは体に負担がかかる緊張状態の姿勢を保持する
筋肉の使い方を記憶しておくことは必要でした。
そういう使い方を小脳がパターン化して覚えてくれれば、
なにも考えなくても自動的に体が勝手に動いてくれます。
昔に自転車に乗ったことがある人が、
数年のブランクがあってもすぐに上手に乗れるのは
自転車をのる手続きを小脳がパターン記録してくれているおかげです。


この以前緊張状態の姿勢を長時間保持しているような仕事をなさると、
すでにそれを辞していたとしても突拍子もないときにその
緊張状態を再現してしまうことがけっこうあるんですよね。
事故で足に怪我をして怪我をした足をかばって使うなどの
緊急時の状態も本能的に痛みの恐れから逃げたときにも
気づかないうちに後々までそのときの怪我した部分が治っても
そこをかばい続けてしまい体のゆがみを作り出すということも
よくあります。



体は痛みの恐怖を逃げるための準備や
緊張の不快からの闘争をするための準備を
後々まで、
すでにそうする必要がない状態になってまで準備をおこない続けるという、
過剰反応的な適正を欠いた反応が体の内側で執り行われているのです。


こういうことは
誰しもひとつやふたつはあるものだと思います。
そのような過剰反応の継続が体のゆがみをつくっているときは、
その緊張した部位の筋肉を解くことと同時に、
過剰な反応を継続していたんではと再検討してみるといいようです。