体の舵。

「人間は歩いているときにどのように方向転換しますか?」
そのような質問をされたとき、
どう答えるでしょう。


ちょっと考えてみてください。


足が前に出るときの足部や足先が向いたほうに曲がるというかもしれません。
骨盤を中心に考えて腸骨で進行方向へ導くと答える人もいるかも。
他にもさまざまな仮説が立てられると思います。


そのような仮説のひとつとして、


体の舵はほとんど退化した尾骨だという人もいるでしょう。


船は『舵』を切ることで行きたい進行方向へと移動します。


船の舵を観察します。
WikiPediaの舵のページがありますので参照ください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%88%B5
設置位置はスクリューの後方の船尾にある。
大きい舵のほうがよく曲がれそうに感じるかもしれません。
船体全体からすれば小さいといえましょう。
それでも水流をうまくとらえれば十分に機能してくれます。



人間の尾骨が猫や犬やねずみのようにスムースに動きません。
ですがハツカねずみが電線を伝え歩く姿を見たことがあれば、
尻尾をうまくバランスをとるための綱渡りの棒のようにも使い
歩いているように見えるでしょう。
実に器用です。
ただ私が以前買っていたゴールデンハムスターも、
電線のように細いロープを必死に伝え歩いてました。
あるかないかくらいしかない尻尾を振りながら。
つまり短く退化した尻尾でもうまく振ることで
バランスをとる役に立つのです。


人間の尾骨は短い尻尾のゴールデンハムスターのようですね。
短い尻尾でも船の舵のごとき動きを生じさせれば器用な体捌きができます。


尻尾は体の中央ライン上に位置している。
左右に偏りのない中央ラインを意識し体をねじるならスムースに回転できる。


尻尾は背部の姿勢筋群に直結している。
尻尾の位置が的確でなければ骨盤全体がゆがんだり傾斜します。
そのため尻尾の位置を正すことで骨盤の前傾などを修正します。


という視点も見逃せないでしょう。


尻尾の舵で動ける人は体の背後を意識しやすいようです。
そのため背後の情報量が増えるため姿勢がよくなります。
背面の姿勢筋群は背後の情報量が少ないと
目の前の情報ばかりに神経が集中した結果、
前傾姿勢となります。


体の舵を意識しているかどうかは
動きの質にかかわる問題でしょう。



施術者が動くときもこの体の舵がうまく切れなければ、
自らの中心軸が定まらず理想的な体重移動を行えません。
それでは圧をかける際に自重を配るベクトルの計算もできない。
体重の乗せ方が甘ければ筋力で補おうとします。
それで施術者自身の筋肉の緊張が生じ自らの体にダメージを与えることも。
施術者の体の使いようがお客様にダイレクトに影響が出ることもあります。
特にこればマッサージ系の分野にとどまらず、
オステオパシーカイロプラクティック等の手技などの繊細な技術を
施す施術全般にいえるかもしれないと思います。


そういうことがあるので、
私が他の施術者を見るときチェックするところのひとつですね。
なのでちょっとした施術者の施術をするときのお尻の振り方で、
「この人はいいね〜。すばらしい!」と感嘆できることもある。


圧をかける施術をするときには、
鼻の尖端、指先の尖端、つま先の先端の三つを意識して動けると、
骨格の活きた動きができますため『この人は、ものすごい!』と思う。
軽々ときつい姿勢や労働までもこなせる自力を持つ人だから。


実は太極拳の体捌きの要諦をそのまま施術に持ち込もうとしています。
中国武術を実践なさっておられる方がみれば、
そのことをお察しいただけるはず。


だから一筋縄ではいかないんです。^-^;


私にはなにぶんまだまだ修行過程です。
ただ日々ポイントをクリアできるように努めて、
独自の成果を少しずつ積み重ねています。