だいぶ前から大型書店にいくと、
きまって「ほしい!」と思いつつも購入をあきらめていた本があります。
ソッカの美術解剖学ノート
【内容】
マンガ家、アニメーター、ゲームクリエーター必読!人体の自然な動きを描くコツが満載!
本書は、韓国の有名漫画家であるソク・ジョンヒョンが9年の歳月をかけて描き上げた美術解剖学の集大成ともいえる書籍です。
特に、解剖学的な自然さに基づく人の動きをどう描くかについて頁を割いて、丁寧に解説しています。
本書には、1コマ漫画がちりばめられていて、人体構造の説明も楽しんで読み進められる工夫がなされています。
本書の個人的感想は、
これほど躍動的で見ていて楽しく解剖学知識が身につく本はない!
ネックは筋肉の図で起始終点などのは記されていないので、医学的な専門知識が詳細に解説してあるかというと、
そこは美術解剖学の本ですから。
期待しないでください。
ただ医学専門書ではイラスト周囲に多くの文字で解説が付されてますが、それがないぶんすっきりとみやすい。
美術解剖学の本ゆえに、プリミティブな形状をあわせてラフに人体像を描いたイラストが多く、
そこは医学専門書には期待できない人体構造の概要をあたまに収めやすくしてくれるでしょう。
たとえば上腕骨の肩に当たる部分は、まっすぐな棒状の上腕骨の上にボール状の関節に接する部分がただ乗っかるようにあるのは間違いで、
ぐいっと肩甲骨の上腕骨が入るへこみ面にマッチした形で曲がっているんだよといったことまでわかりやすく書いてくれています。
それは私たち施術をする者には当たり前すぎることではありますが、
その絵の下に上腕骨の動きをあらわす絵から、クランク状に上腕骨の上端が曲がるイメージが腑に落ちるような解説は、すごくいい。
クランク状に曲がった上腕骨というのは静止した一般的な医学解剖図でも描かれてすぐわかるものの、
それが周囲の骨との協調からどのような動きを示すかというキネシオロジー的情報は抜け落ちてしまい無味乾燥に思えます。
そこをいくとこの「ソッカの美術解剖学」は平易で語りかけてくれるやさしい口調でつたえてくれているのです。
なので単純な解剖図ではなく、本書はキネシオロジー的側面を随所に取り込んで、いきいきとした、漫画でわからせてくれる。
そしてもちろんこれは上腕骨に限ったことではなく、
他のカラダの部位についても目からうろこの欲しかった情報が端的にイラスト化して付しているなど、
「おぅ、この図、使えるよ!わかりやすいぞ~」
といって小躍りするようなものもあって。
随所にあるコラム。
意外に施術をしている先生もたのしく読めそうなものもあるではないか!?
一番やられた~。
この本、すごい!とうなったのは、
68ページめの
「人体を木に見立てる:頭は根」という解説があって。
ここの視点は、私には本書をてにするまでなかったし、
わかれば納得で、それ以降、人体の見方が変わりました。
こんな、目から鱗が落ちる美術解剖学の本、他には見たこともない!!
654ページものボリューム。
長時間、たのしく読めば、自然に平易な解剖学知識やその周辺知識まで得られて。
おまけに、人体図を描く画力もアップ!!
ただ7370円(税込)は、高いな~。 ^-^;
半年間、立ち読みして粘って、その価値は完璧に理解しました。
結局、購入しました。
Amazonの本書のカスタマーレビューでは、
「正誤表がぎっしりある」と誤記の多さが書かれていて、
そこも買い控えしていた理由でした。
ですが重版したということを知り、
もしや訂正済みかと期待していたのです。
先ほど誤記内容が正解に書き換えられていたのを確認し、ほっとしました。
解剖学の本を探している施術を学ぼうとする初学者の方がおられましたら、
こんな本があるんですね。
ただ本格的な施術者を目指す人には、
正直に言えば、やはりこの本は美術解剖学の本なので、
施術上抜けてはならない情報がすべて書かれているような期待はしないでください。
ですが
ダンスをなさっている方、武道を学ばれている方が、
解剖学知識を増したいというケースではうってつけ!
動きにたいしての役立つ視点で書かれた解説が活きてきます。
ぜひ、大き目な書店で本書をチェックしてみてください。
私も、自宅で手にして眺めていて。
いつもは施術の本だとプレッシャーを感じるのですが、
本書は気軽にきれいな絵を目線で追って楽しむだけで。
得ることがたくさんあり、
いい買い物をしたと満足。