【施術のお稽古】握らず、つまむのが極意 ^ー^

【施術のお稽古】は。
いきなりできなくてもいいので、
「そういうことがあるのだな」と知ることが大切。
すると最初はできなくてあたりまえですが、
そのことを知らなければ、なんら違和感を持たないですることに対し、
「あれっ?なんかもうひとつ、必要かな。。」という目ができること。

それができると、大胆に不都合となる癖づけをしすぎることがないのです。

一度付けた癖は、ほんとうにそれを抜くのが難しいんで、
癖付けられる前に『型』を見て、知って、稽古すること。


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体力測定で、握力計をにぎる。
「ぎゅーっ」と力いっぱい握ると、成人男性では50Kg前後、成人女子では30Kg前後。

握力計をにぎる.png




変なことをいいます。

一部の施術をする先生は、
最初のトレーニング段階で握らないトレーニングをするのです。





考えてみてください。

50Kgの握力を持つ男性に、ちからまかせに「ぎゅーっ」と握られたら。。
けっこう痛いんじゃないでしょうか?
自分の右手で左手をギュっと力を込めて握っても不快さがありますが、
それが他人にされると不快感は即効で恐怖心に変わるのです。
その瞬間、筋肉をきゅっと委縮させて抵抗しようとします。
皮膚抵抗値も、その時点で平素よりも高まっていくのです。

そこは動物として身を守る的な条件反射による仕事です。
無意識のうちに、その流れは遂行されてしまうのです。

すると施術者が刺激を送り作用を起こそうとしたくても、
患者側はカラダの表面で外部刺激をブロックしています。
カラダの内部に有効な影響を浸潤させられなくなります。


「だったら、そんなぎゅっとにぎらなきゃいいんじゃない?」と考えるでしょう。

それでだいぶ持たれたときの不快感は軽減できます。
一般的には、これでよしとされるところでしょうか?

ただ人の握力は繊細にコントロールできるようでいてそうでもない、って知ってますか?
人体の質量や形状や持ち手などの異なる腕、頭、足などを持ち上げる必要がでてきます。
そしてこれも人それぞれ、重さも形状も違うのです。

それに見合った絶妙な握力加減なんか調整できませんよ~。
そんなことできている人、存じ上げません。
基本、施術をするときに適当に「こんなもんじゃない?」という目分量で手足を握ってしまいます。
まぁ、患者様側はよほどでもない限り耐えてくれますが、不快さを感じてないわけではないのです。
というのも、
さっきの握ったときの握力が10キロだったが、急に5キロになって、次に15キロになどとなるわけです。
支えてもらう握力の強弱があると、やられる側とすれば、
「強く握られるんじゃないかな?」とか「握力が下がりすぎて落とされるんじゃないかな?」とか。
自分で予測できない他者のやることです。
この時点で身を緩めるリスクを本能は感じ取り、筋硬化という鎧をつけざるをえなくなります。

「じゃ、施術者側が5キロの握力をキープし続ければいいじゃない?」と考えていただくことも。。
でも、それは施術中ですから、手放して元の位置に戻したり、再度持ち上げるを繰り返すうちに、
確実に数キロ単位で握力はばらつきをしめしてしまうのです。

そのばらつきの量にもよりますが、
やはり自分では予測できない他者からの刺激は攻撃にも相通じるものです。
その攻撃にも通ずる刺激の与え方は、施術をする側には


握力でぎゅっとする方法で患者様をつかみたくない。

そこを避ける通り道を模索するわけです。





下図をご覧ください。




握るとつまむ.jpg

左図:一般的には指先へ力を込めて「ぎゅっ」と『握る感じ』で工具を扱うでしょう。
ですがぎゅっと力を入れて握るとわかるのですが、その時点で【手首が固まってる】のです。

右図:工具の柄を包み込むようにし手の型を固定します。
それから手の指を工具の柄に添えた状態のまま、握るときの反対方向へベクトルを感じます。
私のイメージでは、持っている・握っているのではなく、『つまんでいる』。
このときは【手首はしなやかなままで思う通りに動かせる】のです。


手首の柔軟性は施術をするときに、身体の凹凸に絶妙に沿わせたり、圧を正確に方向づけしてかけるにも最重要といえるものです。
手首が硬くなると頭部を乗せる首本体もぎっちぎちになって、視野狭窄が起きます。
患者様のカラダの生情報が見えなくなります。
一瞬ごとに刺激を送れば変化が起きるのです。

そこを汲み取るときに施術者側が手首を固め、その結果から頭部の首を固めるなら、
施術の勝負に重要な情報収集ができず気づかず勝負は独りよがりのまま敗退します。



握ると屈筋操作・ひっかけてねばりつかせてつまむのは伸筋操作。

うまく後者の伸筋操作をこころがけたいですよね。

ここの『型』が身についただけでも、
自身の身体全体の気の流れは着実に変わるでしょう。



文章で読んでもイメージしづらいと思いますが、
いろいろとこの感覚は応用が利く範囲が広いので。
関心ある方には直接の機会を得てお伝えできればと思います。

 

【補足】
昨日のブログの尺骨を取ることと握らずに尺骨にフィットさせてることを同時にすると、
患者様の腕はよく施術者の操作につき従ってくれます。
患者様が仰向けに寝た状態で、
術者があっちに、こっちにとポイントを押さえて動かすにつれて、患者様の肩はなめらかに動き始めるよう変化します。
これは要領さえつかめれば誰にでもすぐできることです。

この状態で術者の手掌腱膜の中心を一点に決め、肘固定をして動かさずに患者様の尺骨保持のまま円運動をすることで、
肩に作られたバリヤーで動けなくなったブロックが崩されさらに患者様の肩の動きはスムースに。
みるみるうちに変わっていくことがあります。

ただし注意しなければならない点があります。

患者様が立位状態で、術者がこの手掌腱膜の回転操作をすると、
患者様の重心を奪いつんのめらせたり、
やりすぎると合気の投げ技になり、
もんどりうつことになり危険です。


尺骨をとらえられるよう持ち手の位置を追究すると、さほど力が使われなくても技が決まります。
施術ではこの投げにつながる円運動があることを知っておいて、危険のないよう使うようにします。

ちなみに、患者様の腕を「握る」とこのような投げ技となることはありません。 ^-^
そして患者様の肩のゆるみ具合も悪くなります。