以前は筋膜の癒着をリリースするときに、
ずり圧をもちいていました。
筋肉の現状コンディションが乱れる様子として、
1・一本の筋肉の腹の部分や腱が、隣り合う筋肉や靭帯や腱または骨(骨膜)に組織が癒着
2・筋繊維・筋繊維のひとまとまりの筋束・筋束が束ねられた筋肉全体などが、一本の筋組織内部で癒着が進む
などの場合があります。
すると重力的に釣り合いの取れた骨格構造が理想な形状を保てなくなる。
こうした筋組織等の関節をまたいだ軟部組織が骨を動かすのですが、
そこに支障がでてくることもあるでしょう。
そして構造の乱れは、その内部ではたらく臓器等の機能が正常に発揮することを妨げることもでてきます。
それゆえに、骨格筋の状態がつくる構造と人体の発揮する組織機能は関連付けられ、
ときには人体の構造を正すことにより組織の機能が正されるよう変化をおこします。
骨格筋の癒着をリセットするときに、
筋組織に刺激をくわえることで癒着部を正常な状態へと分離させていきます。
物理的に筋組織等の癒着は、弱くは固まって乾燥したお餅ほどの硬さと柔軟性のなさ、
そして強くはアロンアルファでほどの冷たく強固化したものとなり状態のもろさがある。
筋組織にしっかり代謝があるような一時的な筋肉の硬化した状態なら、
一般的な休まる程度のハンドマッサージでケアできますし、
他に入浴やエクササイズ等のセルフケアでリセットが効くでしょう。
ただ筋組織が硬化が著しい状態で骨格構造が3ヶ月以上も慢性的に歪んだ場合、
上述したような筋肉のコンディションの乱れが内部の奥まで入り込むときがあります。
あまり詳しくお伝えすることは話が複雑になるため控えますが、
そのときに『ずり圧』と私どもが呼んでいる(物理的に癒着した筋肉同士のわずかな間を作り出し、そこを一定圧を保持した等速運動)で、筋肉組織を正常な状態に分離できるようにわけていきます。
これもすべての筋肉の起点と終点や癒着が好発する場の知識、そしてそれらを触診で見立てられる力が必要となります。
いっぽんいっぽん、筋肉ごとに癒着しやすいパターンを奥まで理解しており、
数十層にも及ぶミルフィーユ状となっている癒着をはがします。
そういったミルフィーユ状の癒着は浅層と中間層と深層と状態が別物ですから、
ずり圧のかけ方も層の深さにより目的の癒着したところの圧法は別物となります。
たとえはおかしいかもしれませんが、
パンクした自転車を治すときに、
釘を踏んだタイヤをテーピングで補修でいけるか、
多年にわたり乗られたタイヤで経年劣化したものならタイヤの全取っ替えでいくか。
いい腕をした自転車屋さんなら、適切に判断できるでしょう。
筋膜リリースをする施術者は、浅層筋の癒着であれば一定のエクササイズ等を教えアドバイスをし、
こちらにお越しいただかなくても現状問題ないとお伝えすることがあります。
深層筋の癒着が進んでいれば、施術者の仲間がわざわざボディワイズの施術を受けに来てくださるのは、
すでに自分の手で思うように筋膜の癒着部をリセットしがたかったり、
そうするにも膨大な時間や労や別の費用発生があるのでそれをショートカットする目的で来てくださります。
一般的に深層筋が癒着した状態を改善させる場合、さまざまなトラブルが現れますから、
そうしたときに客観的な施術者の眼でみてどうみえるかを参考にしたいという思いもあるのです。
つまり浅層の筋膜癒着部の対処と深層とは扱いが性質上変わってくるのです。
そのような筋肉特性を理解して最適化したアプローチをほどこすことが、
安定した安全性と効率、そして効果性をひきだすことになります。
ずり圧により筋ダメージ状態を書き換える場合、
自動車で言えばクラッチの変更でマニュアル車を運転するようなもので、
最大限、場合ごとに即し沿ったリリースができます。
ですが物理圧での筋膜がべっとり張り付いて炎症を持った部分を剥がすわけですから、
痛みもでてくるわけです。
筋肉の張りや緊張部は、痛覚神経が麻痺していなければ炎症をかならずもっており、
特に浅層筋には外圧から身を守る設計により痛覚神経が深層筋に比べて多く含まれています。
それによりずり圧を使い表層筋の癒着を解こうとすると痛みがきつくでてしまうわけです。
なおかつ。
この圧の使い手になるには、多年に渡る修行と研究が必須だといえるでしょう。
対して、ボウエンテクニックで教わった(ムーブ)と呼ばれる筋膜癒着部をリリースする方法があります。
日本でこちらをおそわるチャンスは少なく、私自身、習った当初は意味が半分以上もわかりませんでした。
でも、あとあと研究を重ね理解を深めていくことで、
その画期的な筋膜組織の癒着を剥がして正常化を図るアイデアがずり圧とは別物だということがわかりました。
こちらムーブとは、物理圧ばかりで筋膜組織の癒着を引きはがすものではありません。
お客様の神経にムーブをかけられた筋肉の状態情報を得られるような特殊な圧法として工夫されています。
ムーブを積極的に行う場所には、経絡上の経穴部を選ぶときが多く、
それゆえ経絡中を流れる気が滞る点を修正するように用います。
この点が実は痛みが軽減したかほぼ痛みがない圧なのに、
体内で筋膜組織の癒着をはがしだす秘密になっているのです。
なので鍼灸師さんが、ムーブの技術を数ヶ月ほど学ぶと、
おもしろい活用をなさっていただけてますね。
最近、圧刺激法をムーブにしてから、
お客様から『最近、圧をかけられても痛みがないか、ほんと少なくなった』といわれることも。
そんなとき、手抜きで『よかったですね~、痛いのはいやですからね~』と言葉を返しています。
実はムーブを使う場合、
表層筋も中層筋も深層筋も、
それぞれ相等しい手法での一定のやり方のムーブでいい。
つまりずり圧をかけていくときは、表層~深層、それに筋ごとにまったく別のずり圧のかけ方だったが、
ムーブではそこの難解さはだいぶん差っ引いても効果が引き出せちゃうんです。
同時に圧の制御を硬化度と対抗するずり圧とは違い、
硬化に対抗しない刺激でもムーブはリリースがおきます。
ずり圧をかけるときのお客様自身のリバランスがどうなじまれるかという難しさがあるものの、
ムーブでは比較的お客様の施術後の状態の変化を受け入れやすくなっていますね。
そしてたとえば頭板状筋のようなずり圧はご法度な場所もムーブなら余裕で対応できる手広さがある。
そしてベン石温熱器のような患部を注熱してからムーブをかけると、ずり圧以上の変化が期待できる。
それらのずり圧とはことなったユーティリティさを感じ、狐につままれたようでした。
いままでずり圧を必死こいて研究して修練したんだけど、なんでやねん!?的な驚きです。
その事実を知ったとき、
もっと自分なりのムーブの方法を模索しようと考えました。
同じくムーブといってみても、
なにげなくムーブをしているか、
その裏側にノウハウをいくつも詰め込んで効果を飛躍させるムーブをするか。
それにより天地ほど効果の開きを実感できるようになります。