生薬関係の本、やはり、『漢方294処方生薬解説』かと思いますが、『現代本草集成』にも興味しんしんです

『生薬は単語、処方は文法』といわれるそうです。

たとえば英単語を記憶する《インプットの段階》を経て、
理解した単語を文法に則り組み合わせて文章を作ります。
生薬と処方の学習はそちらと同様かもしれません。


生薬という単語の語数は
日本で保険適用されている医療用処方は148種類あり、
これらに使われている構成生薬の数は約300種類と言われています。
日常的に使われている生薬は約200種類です。
一般に薬局等で買える一般用医薬品となる処方は約210種類です。



『生薬は単語、処方は文法』として、
めったにお目にかかれない生薬はその都度確認することに任せ、
日常的に使われている生薬は約200種類を頭に入れて、
一般用医薬品となる処方の約210種類が使えればいい。



そういうことになります。



英単語のインプットの労に耐えきれず英語が話せない私ですから、
生薬や処方についてもネイティブになれる夢は抱かないがよくて。
興味関心の機会を得た生薬と処方だけは納めたいと考えています。



がんじゅうふぁみりーさんのYouTubeに登場した生薬や処方を、
同じ映像を繰り返し観て覚えようと考えていました。
初心者にやさしい教え方で、大事な事項は何回も繰り返されて、
自然に頭に焼き付いてくる。
それを自宅監禁状態で3ヶ月、持久戦で粘りました。
お陰様で、少しずつ生薬と処方の大まかなつかみ方が見えだす。
学ばせていただいたがんじゅうふぁみりーさまへお礼の気持ちを込め、
この度、がんじゅうふぁみりーさんのメンバーシップ登録をしました。
メンバーシップ映像を拝見させていただき深堀りした処方の内容から、
適切な処方の使い分けのコツを勉強させていただけました。

他にもYouTubeで、
・鹿野教授の漢方医薬講義 鹿野漢方研究所 鹿野美弘教授
東洋医学系YouTuber 円龍先生
東洋医学公益講座 羅 予澤先生


私は神戸中医学研究会『中医学入門』という本で、挫折した経験から、
中医学の言葉慣れするまでYouTube映像視聴のみに学習を絞りました。
ゆっくりペースで繰り返し学べて無理がない。

少しずつ英単語や文法ならぬ、
中医学単語および生薬や処方が頭に入ってきたおかげで
興味関心の機会を得た生薬と処方だけは納めたい、と。
ひとまずそこをゴールと考えてみます。



そうなってはじめて、
本からの勉強も楽しさが感じられます。



3ヶ月経って、、、ようやく、
本を開く気になった厄介な性格で、
通学なら完璧に落ちこぼれてます。


ひとまず、
手持ちで中医学関係の本は揃ってます。
手技療法で必要な経絡関係は特にです。

ですが、生薬や処方などの漢方薬関係の専門書は手薄です。
いまだになにを買えばいいかわからず、
まず図書館から複数冊借り比べてます。
(いきなり書名買いで本を注文して失敗するでしょうし)


借りた本のいくつかをあげますと、


[処方関係書籍]
中医処方解説
・漢方重要処方60
・図解 漢方処方のトリセツ 第2版
・漢方処方 保険で使える全種類丸ごと
漢方薬鑑別キーワード大全


[生薬関係書籍]
・東邦薬草新書
本草備要解説
・現代本草集成
・漢方294処方生薬解説



それぞれ個性を打ち出しており、
「この中だったらこの本を手元に置きたい!」
そう思えた本が選びやすいくてたすかります。
書店で複数冊の本を眺めたら目移りしますが、

自宅で[生薬関係書籍]内の本を開き、
生薬[遠志(おんじ)]を調べてみました。



一冊目、『東邦薬草新書』


本書は中国人により記された本であり、
掲載ある生薬は詳細に解説されています。
ただ普段遣いの生薬も解説がありますが、
中国ではメジャーでしょうが、
日本ではマイナーという生薬掲載が多数。
個人的主観で恐縮いたしますが、
いまの私にはいまひとつ響きません。
でも知的好奇心を広げてくれる良書ですね。


『東邦薬草新書』は、
生薬[遠志]に特別ページを割いて解説しておられませんでした。

ただ巻末にて図表により、以下の記載のみありました。
===============
■ 養心安神薬:遠志 苦・辛/温 肺・心・腎 安神・去痰・消癮 1.5-9g [備考]悪心・嘔吐を引き起こすことあり
===============

備考の[悪心・嘔吐を引き起こす]という内容について、
どういう条件下でそうなるかが知りたいところですが、
記されてはおられませんでした。




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次に『本草備要解説』。




本草備要解説』のもととなった『本草備要』は、
中国清代に汪昂が著した本草学の代表的な書物です。
本草綱目』と『神農本草経疏』を主な参考文献とし、
薬物の性質や要点を簡潔にまとめたもの。

本草綱目』は詳しすぎて読み進め記憶するのが難儀し、
『神農本草経疏』では情報量が足りていないと感じられる。
それに対しその中間を心がけた本書だからこそ
いまも日中で愛読され続けているというのもうなづけます。

本草備要解説』は、その『本草備要』から200種類を解説。

ただいきなり初学者がこちらを手にするのは難があるでしょう。
たとえば「九竅を利す。」の「九竅」がわかれば読み進めやすいが、
わからなければ中医学用語辞典を片手に調べながら読み解く必要があり、
サクッと頭に解説が定着する感じは受け取れなくなってしまうでしょう。




本書中の「「遠志」」を探して。
具体的に一部を参考となるよう書かせていただきます。

ちなみに他の生薬解説も、下に記した遠志のように、
生薬名
読み下し文
(注)
[解]
[原文]
の構成となっております。


7. 遠志(おんじ)

心腎を補う。苦。熱を泄す。壮気を温む。鬱を辛散す。手少陰を主る。能く腎気を通ず。心を上達す。志を強くす。智を益す。精を補う。陽を壮にす。耳を聴にす。目を明らかにす。九竅を利す。肌肉を長ず。筋骨を助ける。迷惑善忘、驚悸夢泄、腎積奔豚、一切瘤疽を治す。心を去り、甘草と一宿水浸して用う。真珠、藜蘆を畏れ、 茯苓、竜骨を得て良し。

(注)手少陰は、経絡の手少陰心経のこと。迷惑は、心がまよい、まどうこと。善忘は、しばしば忘れること。驚悸は、驚きおそれて、おののくこと。夢泄は、夢をみて精液を漏らすこと。腎積は、奔豚病のことである。継痕は、化膿性皮膚病変のこと。

[解]遠志は、帰脾湯、加味帰脾湯、人参養栄湯などに配合される。

遠志は、ヒメハギ科 Polygalaceae のイトヒメハギ Polygala tenuifolia Willdeno の根である。

[原文]補心腎苦泄熱、温壯気、辛散鬱。主手少陰、能通腎気上達於心。 強志益智、補壯陽、聰耳明目、利九竅、肌肉、助筋骨。治迷惑善忘、 驚悸夢泄、腎積奔豚、一切癰疽去心、甘草水浸一宿用。畏真珠、藜蘆、 得茯苓、竜骨良。

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本草備要解説』の他の生薬解説ページに
「遠志」の表記があるかをチェックしました。

すると、
■ 甘草(かんぞう)・紫苑(しおん)・甘遂(かんつい)のそれぞれの生薬解説中には『遠志を悪む。』と書かれております。
牡蛎(ぼれい、かき)では『甘草、牛膝、遠志、蛇床子を得て良し。』とあります。

甘草(かんぞう)・紫苑(しおん)・甘遂(かんつい)の生薬と遠志は、
両生薬を同時にとると相反または相悪となるのだろうか?
遠志は牡蛎(ぼれい、かき)と相性が、どういいということでしょうか?
興味深いですね。

以上、本草備要解説、遠志より





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次に、『現代本草集成』。

生薬解説中に臨床上で副作用等が懸念される事項を【毒】として、
冒頭近くにまとまりよく解説してあります。
禁忌を十二分に配慮しなさいとのメッセージがつたわってきます。


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《全体的に思うこと》
大意とまとめを読めば、大方の生薬の特性が理解できます。
なおかつ現代薬理学的作用や成分や配剤漢方薬が把握できます。
臨床上、薬理学的作用や成分の理解は重要となり、ありがたい!
魅力的に感じるのは
本草書にまたがった考察や薬効の差異が表記されており、
本草書の性格(細部まで描くか要点を絞り簡潔)がつたわってくる。
簡潔すぎると要点が欠けて感じ、詳細すぎると覚えきれないだろうと。
そうした違いが本書で具体的に気づくことができ、
資料価値と「この本草書を読みたくなった!」といったきっかけが得られます。
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「遠志」の項に、【毒】の記載はございません。



具体的に一部を参考となるよう書かせていただきます。


遠志 オンジ
大意
遠志の味は苦、性は温、帰経は手の少陰心径、足の少陰腎経の二経に入る。心気を定めて、物に驚きやすく、胸騒ぎのする者、よく物忘れする者に用いる。又、腎虚で小便の回数の多い者、精が漏れやすい者に用いる、私云う、途志は右の火を補ぎなうものであり、左腎の水を益すものではない。又、精が溺れ易いのは腎虚だけではなく、 心気が不定より生ずることもあり、痰より生ずることもある。遠志が遺精がもれるのを治するとあるが、これは心気の偏りからおこったのを治すると心得るべし。口伝がある。


[まとめ]

①遠志の味は苦、性は温。
② 帰経は手の少陰心経、足の少陰腎経の二経に入る。
③心気を定め、物に驚きやすく、胸騒ぎする者、物忘れする者に用いる。
腎虚で小便の回数が多い者、精の漏れやすい者に用いる。
⑤遠志は右腎を補い、左腎の水を益すのではない。
⑥精が漏れ易いのは腎虚だけではなく、心気が不定のことから生ずることもあり、又、痰から生ずることもある。
⑦遠志が精が漏れるのを治するとあるが、これは心気の偏りから生ずるものを治するものと心得るべし。


考察

1.気味

①「増補能毒」:味は苦、性は温。
②「神農本草経」:苦、温。
③「増補重校本草備要」:苦、温。辛。
④「中药学概論」:苦、温。
⑤「中药大辞典」:苦、辛、温。
⑥「漢薬の臨床応用」:苦、辛、温、

2. 帰経

①「増補能毒」:手の少陰心経、足の少陰腎経。
②「増補重校本草備要」:手の少陰(心)経。
③「中药学概論」:心経、腎経の二経に入る。
④「中药大辞典」:心経、腎経の二経に入る。
⑤「漢薬の臨床応用」:肺経、心経、腎経。


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⑤「漢薬の臨床応用」:肺経、心経、腎経。
こちらの肺経の記載があること、
②「増補重校本草備要」:手の少陰(心)経。
こちらの腎経の記載がないこと。
本草書ごとに差異があるんですね
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3. 本草書による薬効

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こちらは長くなり省略させていただきますが、
本草書比較をすれば、
本草書ごとに薬効の記載やその量が大きく異なります。
本草書ごとに薬効表現の言葉の違いがあるが
意味が類似するものもあります。
②「増補重校本草備要」が詳細に描かれており、
【大意】もこちらの内容を多く活かしております。

個人的な見解で恐縮ですが、
現状の私では【大意】の読み込みと【まとめ】まででよく
本草書の書き方の違いに関心が向くほど勉強が進んだとき、
『3. 本草書による薬効』を読むことになると思えました。
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4.現代薬理学的作用

① 鎮静・催眠作用 :水抽出物(マウスの経口投与で自発運動量等を減少させた。)遠志の代謝物 3、4、5-trimethoxycinnamic acid とその関連化合物はマウスで睡眠延長作用を示す。
②抗消化性潰瘍作用:水性エキス、粗サポニン分面:マウスの拘束水浸ストレス等のストレス負荷による消化性潰瘍の発生を抑制。
③去痰作用:温浸液をハトに経口投与:気道に分能する粘液の排出を促進。
④抗腫瘍作用:メタノールエキス:マウスの骨髄性白血病細胞の増殖を抑制。
⑤利尿作用:メタノールエキス:ラットのうっ血性浮植に対して経口投与で浮腫の抑制と利尿作用を示す。

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本書の大意とまとめに解説がある作用と
( 鎮静・催眠作用 / 去痰作用 / 利尿作用)

本草書の薬効には書かれている癰疽(* 癰(浅くて大きなできもの)と、疽(深くて悪性のできもの)。悪瘡。毒瘡。)
(抗消化性潰瘍作用 / 抗腫瘍作用)といった薬理作用があることがわかります。


成分分析からわかる栄養素が含む薬理作用もあれば、
実験により検証し、結果として得られた作用もあります。
生薬は複数の成分が単独で存在するのではなく、
複雑な組み合わせの上に組成しているため、
単純な栄養成分通りの結果の通りでないこともあります。
興味深い。


遠志に抗腫瘍作用があることは、私はこの本で気づきました。

AIで「遠志に抗腫瘍作用」で調べると次のように。

有効成分: 遠志の根に含まれる多糖類 (Polysaccharides from Polygala tenuifolia, PTP) やサポニンなどの成分が、抗腫瘍活性を持つことが研究されています。

作用機序:
がん細胞のアポトーシスを誘導する(特に卵巣がん細胞や膵臓がん細胞、肺がん細胞)。
がん細胞の増殖、浸潤、転移を抑制する。
血管新生(腫瘍への栄養供給路)を阻害する。
免疫機能を調節し、ナチュラルキラー(NK)細胞やリンパ球の活性、特定のサイトカイン(IL-2, IFN-γ, TNF-α)の分泌を促進することで、抗腫瘍免疫応答を強化する。
特定のシグナル伝達経路(NF-κBなど)に影響を与える。

対象となったがんの種類: これまでの研究では、ヒト卵巣がん細胞、肺がん細胞(A549株)、膵臓がん細胞、マウス腎細胞がんなど、いくつかの種類のがん細胞や動物モデルで効果が確認されています。

遠志の抗腫瘍作用の証明は、動物実験によるもので人間に対しての研究成果はまだという。その点は留意したいと思います。



他の生薬のページを参照しても、現代薬理学的作用には
本草書に記されていない作用が多く記されていました。

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5. 成分と基源植物

<成分>
サポニン類:onjisaponinA~G
②その他:桂皮酸、キサントン誘導体、糖類、脂肪油等。

<基源>
イトヒメハギ Polygala tenuifolia Willdonow (ヒメハギ科: Polygalaceae)の根。


6.配剤される漢方薬

①出現頻度:4/198(2.0%)
②配剤される漢方薬:帰脾湯、加味帰脾湯、加味温胆湯,人参養栄湯。


以上、、『現代本草集成』遠志より







次に『漢方294処方生薬解説』。

まず最初にひとこと。
この本はまっさきに手元に置きたい一冊です。

昨今、インターネットで公的な生薬データベースも利用でき、
情報密度の濃いデータ入手が即座にできるようになりました。
そういった時代だとしても、
本書の存在は貴重でしょう。


医療用処方に使われている構成生薬の数は約300種類と言われていますから、
294もの生薬解説は全体をカバーできております。
すばらしい!

各生薬は見出し項目が多く、
知りたい情報が得やすい!

見出し項目は以下となります。
[基源]、[異名別名]、[選品]、
[成分]、[薬理]、[効能主治]、
[引用文献]、[配合応用]、[配合処方]


見出し項目の利用として[配合応用]を取り上げましょう。
[配合応用]に遠志+桔梗、遠志+五味子、遠志+酸棗仁、遠志+茯苓、遠志+竜眼肉と、配合の組み合わせ方により期待できる効能が記されています。
[配合応用]に紹介された簡易バージョンでなら、
処方を試す前段階として試しやすいのでしょうか。
ちなみに遠志+茯苓はこころを落ち着かせる配合とのこと。
手持ちの茯苓で、人参養栄湯の簡易バージョンとしてすぐ試せそう?!




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以上、いろいろ思いつくままに書かせていただきましたが、
早々に手に入れたいのは『漢方294処方生薬解説』です。
ちゃんと処方理解が深まったら『現代本草集成』もほしい。

生薬関係の書籍はひとまずこのような気持ちでおります。



『生薬は単語、処方は文法』。

現在、私が覚えたいと考えている生薬の数は40生薬ほどです。
それら生薬は穴を少なく把握して、処方の理解につなげたいと。
関心ある課題解決に向け、
必要な生薬と処方と言った単語と文法を学んで、
片言がお話できるようになれば。

まずはそこでしょうか。



皆様は、生薬の学習方法として、いかがお考えでしょう?
とても気になるところです