体のなかの球体のイメージ

人体の絵を描くときにはコツがある。
たとえば頭部を描くときに、下顎を抜かした上部の頭部を球でつくる。そして側頭部を削り落とす。
すると頭部の概略がかける。
つまり頭部は球を模して作ろうとする。
そのイメージがつかめると、大雑把に頭をとらえられる。
そしてその球体に下顎を付け足せばいいだけだから。

そしてこないだフェルデンクライス・メソドの仰向けに寝て休むポーズをしていたとき。
自分の頭部が球体であるイメージを持ってみた。
自分の頭を立体的に描いている様子。とても安定した状態の球体だ。
そうするととても落ち着いてきて、顔の表情のこわばりが消えていく。
「これはおもしろいなぁ」という興味深い発見。
しかし体の他の部分をも意識してみると同時に、肩や腹部や胸部、臀部といろいろな箇所に球体が仕込まれているような感触がつかめてきた。
容易に透明な球体が見えてくるのだ。

太極拳をしている方は、円の動きが動きの基本であると教わっている。
そしてそれは発展的に考えれば立体視すれば球体。
球体の動きを、かつての中国人は見つけていたのかもしれない。
そして体のなかにもさまざまな球体が仕込まれていて、それをもっともスムースにいかして使う方法として、
円の動きが究められたのかもしれない。
体のなかの小さなパーツとしての頭部の球体、肩、下丹田、左右臀部などの球体がフラクタル理論の一要素。
太極拳ではそれを使ってより大きな動きの球体を表現すべく、円の動きをとろうとするのだろう。
太極拳のよどみなく流れる動きのなかに深い人体への洞察力を感じる。
また呼吸に合わせて体の動きをよく観察すると、もっと小さな球体が見えてくる。
そしてその各球体の強さや影響範囲が感じ取れる。
ちょっと分けの判りにくい表現だが、人間は直立しているとき球体が立て並びになるというとても不安定な状態で立つ。しかしその不安定さが微妙にバランスを意図してずらすだけで大きな運動エネルギーを取り出すことができる秘密になっているのだと考えられる。

個人的にそう感じ取ることができるだけなのかもしれないが、確かにその球体の安定したイメージを体のなかに発見できるようになって、身体のリラックスの度合いや信頼感が飛躍的に伸びたのは確かだ。