我が家は私道に入った2件目にある。
その近所に80代の女性が独り暮らしをしておられる。
その猫の名前はボス。
雄か雌か不明。
薄茶のみけ。
ボスの両親は野生猫。
その血統を受け継ぎ、決して人に媚びる事のない猫だ。
ただし飼い主は別格。
面倒みのよい猫で、4年前、2匹の友達猫をつれてきた。
黒猫と黒としろのブチ猫。成猫だ。
自分の餌をこの猫達にあげようとして、勧める。
結局は、主人はその猫の餌をも負担する事になった。
餌代だけでも大変なものになっていた。
猫達は仲よさそうにのきさしの上で、夜の人通りを眺めていた。
だが2年後、黒猫は、自分の死期を悟り、餌をもらっていた主人に別れをいい、
どこかに去ってそれ以来見かけなくなった。
信仰心の篤い方なので、猫のこころがわかるのかもしれない。
そう感じたといわれた。
そしてその半年後白と黒のブチも死んだ。
ブチは、本当はどこかに去ろうとしていたのだろう。
だがどうにかやっと最後のお礼をするのに主人の前に現れ、
そこで3時間後息を引き取った。
ボスも、気落ちした事だろう。
野生猫は、都会では2〜4年生きられるかどうかだ。
でもかならず最後には顔を見せてから、この世を去って行った。
こころから猫を世話していた気持ちが伝わったからだ。
だが今度は主人の80歳の女性が癌で、入院・退院を繰り返すようになった。
入院前にはボスは落ち着かない様子。
入院後は、うちの母がエサと水やりを頼まれてお邪魔するが、
主人のベッドの中でずっとじっとうずくまる。
それでエサも食べられていない。
痩せこけていくボス。
主人がいなくなれば、生きる気力を失せていくように見える。
ボスの様子を気づかって、主人も早く帰りたいが、病状が思わしくない。
だが主人はボスの、その声なき強い念を受け取っているはず。
・・・
最近、主人は通院で抗ガン剤を受ける治療へ代わり、退院。
やつれたボスは6日して体力が戻った。
またパトロールに明け暮れる。
『猫は家に付くという言葉』
本当に愛情をそそぎ、育てている飼い主には当てはまらないのだろう。
今、主人にとってボスは、かけがえのない同居人になっている。
命をやりとりするなかでは、その猫の痛々しい純粋さが身に沁みてくる。
純粋なこころを受け止めるのも大変です。
ですが、がんばってほしいと心より祈っております。