腰椎のねじれた理由は?



よっ、こんにちは!」と後ろから声が聞こえた。


するってーと、誰だろかと声の調子で察しはつく。



魔女の一撃.jpg



そこで声の主に目を配ろうと振り向きざま、
あぁ、黒川さんだね、こんに・(ギクッ)・ち・・は・・・」ということがあります。




声をかけた本人は、
そんなことになるとは夢にも思わず、
あたふたとするばかり。。。


「どーしましょう。。。だ、大丈夫ですか!?」





この振り向く動作と同時に、魔女の一撃
ぎっくり腰になることが多いと言われる。


悶絶しながら、腰を曲げてしゃがみ込むしかありません。





このような振り向く動作を『回旋運動』と呼びます。




回旋動作は12個の胸椎全体で30度程度回旋してくれます。


30度、というと三角定規の30度・60度・90度の30度ですね。
思ったほど大きくは回旋しないんです。


胸椎の回旋動作は、
胸の前に胸骨があるから安全に回旋できます。
回旋しすぎて体を壊したなんていうことには、
生理的になりはしないんですね。



だから振り向く動作をした人が、
胸椎と頚椎頚椎は左回旋60度、右回旋60度も回旋できるんです)で
合わせて最大、60度+30度=90度も顔面を意の方向へ向けられます


それでまかなえれば、ぎっくり腰なんてなりません。




ところが!です。



この胸椎が固くなって30度の回旋をしてくれなくなったとします。


すると本来期待していた回旋運動ができないことになるわけですね。


意外に、できたことができなくなったというのは不自由なものです。





ではどうやって、この30度の胸椎の回旋不足を補うのでしょうか?



そこで登場したのが、腰椎


腰椎を「ひねろう」とか「ねじろう」とさせることで、カバーする


ただこの操作は代償を大きく払わねばならない補完作業なんですね。


それは、もともと解剖学的なことをご存知の方でしたら、
腰椎は椎体部分(椎間板というクッションがあるところ)には回旋軸が無いんです。


腰椎の回旋軸は椎体中心部には無いのは意外ですよね。


でも腰椎部分もひねることができてるじゃないのーとなりますが、
では、どこで回転しているのか?



それは背骨の後方の棘突起基部という
ゴジラの背骨から突き出たような出っ張り部分にあるだけなんです。



つまり腰椎の椎間板の部分は、本来、あまり回旋しません。
回旋させすぎると、組織破壊が容易に起きる危険性がある
よっぽどの苦肉の策でなければ本能的に使いたくない。


でも、日頃、胸郭や頚椎の回旋がしづらい人は、
仕方なく、腰椎部に負担を強いて変位至らしめてしまう。



胸椎の回旋を補うという負担と、
腰椎椎間板の上下方向の圧縮という負担と、
大腰筋が柔軟性を失いガチガチになるなら。


そういった腰椎の変位が芯まで硬化していく時間の経過が積もり積もっていく。


そうなれば、
ギックリ腰の起る条件を兼ね揃えたわけです。



椎間板ヘルニアになりやすいタイプは、
ガッチガチの硬くなりやすいタイプではない。
つまりガッチガチに固めやすい人は、
容易に自前のコルセットを作れるので、
それに任せて安定した生活ができます。


ただしなやかな柔軟性が寝たら取り戻せる筋肉の質の具合がいい人は、
自前のコルセットを作っては寝てぐらつかせ、
作っては寝たらぐらつかせ、を繰り返してしまう。
つまり質のいい動き方を熟知できなければ、
度重なる繰り返されるぐらつかされようが芯にまで届きます。
そのような芯が椎間板のクッション部分なんでしょうね。


筋力があることが、かえって大事になってしまうなんて、
皮肉ですが。


だからこそそのような方々の場合には、
質のいい動きにスイッチできるかどうかが、
再起にかけるポイントじゃないかなと思う。




若いときにサーフィンをなされていた良い筋肉があったが、
その後、いくども腰椎椎間板で手術をなされた方もおられました。


条件的には、施術だけでは立て直しが難しい、筆頭ですが、
本来は、最小限の動きで最大限の仕事をさせる術を身につけやすい人なんです。


なんたって、もともと筋肉の感性が、バツグンにいいんですから。
そこは、ご本人がたとえ否定しても、絶対に私は疑いませんから。


そこを知りつつ十分な動きについてのサポートをできなかった。
そこが実はこの度の休業に入る前に、大きくやり残したことで
自らが情けないことしかできていないなと思えたところでした。


そういったところもあって、PNFのようなもので、
動きの再教育を疑似体験できるような技術を得られないかと思っていました。
それだけではおさまりようもなくて簡単じゃないですが、
背中全体の対角線上の動きなどヒントにはなるはずでは。





つまり自分は強い筋力を持っていたという人で、
知的に優れているような柔軟な脳の使いが出来る人ほど、
椎間板ヘルニアへとなりやすいものです。
多数、私も人を観ておりますが、
基本、こだわりを持った知性肌。
そのような傾向が多いようです。



または胸椎の回旋の30度が失せている方々は、
少なからず腰椎にムリな回旋を強いていますし、
そのねじりの破壊力が腰椎へ左右に棘突起がずれる変位になるようなケースと見たら、
胸椎の30度の回旋力を取り戻すのが腰椎の変位を治める下ごしらえ』となります。





先日、個人的に、
長い間、メールでやりとりをさせて頂いていた方が、腰部に不安があられるようで、
時間を作っておじゃまさせていただきました。



そのときに、胸郭の拡張状態が恒常化して(つまり胸の肋骨の鳥かごが開き続けて)
腰椎のずいぶん曲がっているところがありました。
この胸椎の30度を腰椎を左右変位させることで
カバーしているような具合が見えていました。


つまり切った胸郭まわりの筋肉群があるなんて、
意外に人は気づかないものですね。
でも、少しずつ緩められると
激しく刺さったり千切れそうな恐怖心が出たりしやすいのが胸郭筋群の特徴です。
私がそれほど強く圧しなくても、一旦、そこをゆるめてあげて、
麻痺した痛覚神経を働かせてあげれば、
緊張しきって固まっている様子だと気づきます。


特に上部胸椎は麻痺が覚め痛覚が戻れば、
軽く触られるだけで尖った目打ちで刺される痛みに感じられるでしょう。


これを感じて、始めて『おゃ!ここに何か問題があるな』と自覚できる。
これは大切な気づきだと思います。




ちなみに胸郭が緩んでいる人に対して、
胸郭を緩める操作をしても気持ちよくて眠くなるだけです。
痛みはありません。
(胸郭が詰まっている方は仙腸関節や臀部筋を解いてからでなければ、
余計に強く悶絶します。)



ならば『胸椎を緩めよう!』というアイデアが思い描ければ、
腕の肩関節をしっかりはめ込もう!』という操作も大事なことに気づきます。


肩関節がずれてしまって上に肩が持ち上がり気味ならば、
それが胸郭をずらして固定させて肋間筋を緊張したままにさせてしまいます。



ギックリ腰の予防には、
あとは大腰筋を緩めていき、
萎縮した起立筋群を緩める。
ちなみに起立筋群のバックラインと称せられる延長線上に並ぶ
臀部、ハムストリング、ふくらはぎなども緩める必要があるでしょう。





結果的に。
腰椎のズレ(変位)をとらえるなら、
直接的に曲がっている部分を真っ直ぐにストレッチしたり、
出っ張っているところをまっすぐになるよう押し戻しても、
それだけでは十分な対応にならないことがあります。


脊椎全体の具合を観て腰椎部分が問題があるならば、
全体がすでに問題が出ているものなのでしょう。


脊椎の並びからして一蓮托生の同盟軍のようなもの。
一部は全体のために、全体は部分のためにと関連深いものです。


だから腰椎がずれてるねといえば、
他の全部が同様に問題が出ていて、
できれば他の問題が深刻ではない部分から改善させて立て直された部分を積み上げていく。


一見すると、すごく手間隙がかかって遠回りに見えますが、
私はそれで安全に確実に前進が積めるのであれば上々かと。