「硬くなった筋肉」・「短縮した筋肉」とは?

身体を動かすことで人体は緩みます。
先ほどGWに若者4人が車で出かけた帰りに渋滞にあった映像が流れていました。
すると運転している男性が「腰が痛い~」
みなさまも、そのような経験、ありませんか?
映画館で3時間以上の長編映画を観たときも、
身体がガッチガチになって、外に出たときに軽くストレッチをしている人も見かけます。

身体は活動の停滞状態があれば、すぐ硬くなるんだということがわかる事例です。


身体を動かすことで古くなった筋膜が新たな筋膜へ置き換わるのが自然です。
ですが不活動が続くことがあればどうなるか?

古くなった筋膜がうまく新たなものへと置き換わることが遅れたりとしづらくなった結果、
筋膜内へ線維化したたんぱく質が蓄積していきます。
こうしたたんぱく質を含んだ筋膜は筋繊維に対して徐々にきつく絡みついていく状態に陥ります。
こうなったとたん筋膜が伸び広がったり筋膜の持つ外圧をはじいて筋繊維を守る弾性力が欠けはじめるのです。

 

先に申したように、大渋滞に巻き込まれて座りっぱなしの男女若者も、
GW旅行での行き帰りの時間でも軽度なこの現象がおきています。

ですがこうした不活動の裏には一定姿勢で部分的な筋の使い過ぎが隠れていますね。
それも含めてストレッチ等で復活してもらいたいところですね。

これが生理学的にいうところの「硬くなった筋肉」・「短縮した筋肉」の実態ですね。

 

ただ長期間にわたり一定の運転姿勢を続けるタクシー運転手やバス運転手になると、
腰痛が職業病とされるほど、多くのドライバーが同じような症状に苦しみます。
ミクロの目で観れば、筋膜の広がる性質や弾性力が戻れなくなるほど、
たんぱく質が線維化で置き換わった筋膜の質が悪化してのこと。
筋繊維がつねに筋膜にぎゅうぎゅうと締め付けられている状況だというわけです。

こうなると筋の縮みによる制限も一過性のGW渋滞にはまった若者の比ではありません。

複雑な作用のもとで筋の柔軟性は減少するか失われていき、
筋膜の線維の絡まり方が筋の形状を記憶した合金(形状記憶合金)のように、
よくし続けてきたままの筋の状態へと筋膜の絡まりで作り出してしまうのです。
慢性化した職業病や首凝り腰痛肩こりなどの症状では、
明らかに筋膜の線維化が筋膜の広がり伸びる性質を奪い押せば跳ね返すような弾性力が低下して塊と化していきます。
そうした筋膜の中に納まった筋肉は、ぎゅうぎゅうに絡みつく筋膜の繊維状組織に締め付けられているため、同様に動けなくなるのです。

 

私がする施術での筋膜リリースは、正常な筋肉のパッケージができなくなった筋膜を緩めるというのが狙いです。

 

繰り返しますが、
硬くなったり短縮している筋肉とは、
筋膜の新旧の置き換えがしづらくなった過程で古いたんぱく質が線維化して筋膜内に残っていき、
筋膜が筋繊維や筋肉に絡みついて締め付けるような状態を引き起こしているんです。

そしてこのような慢性的な職業病といえるような状態や慢性化した長期間にわたり筋膜線維が筋を締め付けているとどうなるのか。

筋膜の繊維質の線維化が進んで弾力性は欠けて、血液がその筋や筋膜組織へと送り込まれることに対し制限を課す虚血性状態に陥ります。


時折、私が慢性化した筋膜の癒着をお持ちのお客様に、
「この現状で強い圧をかけたなら、ぷちぷちと筋繊維がちぎれて、損傷したそれは二度と元に戻りませんので。
 今回はこのままにして代謝が上がって血が患部に流れて状態が好転するのを待ちましょう」
という場合があります。

通常、お客様への圧は、ほぼほぼ90%筋膜組織の弾性力で受け取ってくれているから筋繊維がちぎれることはないのです。
それが筋膜状態の質が劣化すれば、
虚血性状態にて伸び切ったり固まり切ったりの筋膜は筋繊維を守る力がほぼ失せています。
だから施術者がそのような患部に圧をかければ、もろくなった筋膜が壊れたと同時に内部の筋肉も容赦なく引きちぎられます。

筋繊維は、柔らかくもろさのたんぱく質からなる組織。
だからこそ筋膜の弾性で筋繊維に加えられる外圧から身を守る仕組みがあります。
ですがパリッと割れて壊れる板ゼラチン状に変質した筋膜の硬化状では、もう筋繊維を守るなんてできてないんですね。。。

なかなか筋膜の状態を読むことは難しいのですが、虚血性状態に陥って居れば、
その際、その部位への水分の代謝が減りもちもち筋ではなくぬめりが一部見えている点と、
代謝が阻害された冷たさを感じられることが特徴です。
ただ全身から総合的に見ていくことができなければ特定は難しいでしょう。

このような条件下では施術は受ける側も慎重になったほうがいいでしょう。
同時にストレッチやヨガ、または自己マッサージでもこの条件下に陥ればダメージの進行が改善より勝ります。

昔は湯治場という、薬効成分の高い湯屋に通い詰めて体をほどいていく養生法がありました。
個人的には筋膜はコラーゲン組織で組成されているため、
熱を適度適量あたえることで筋膜のコラーゲンのゼリー状からドロッとしたゾル状に変質する性質があります。
極力はこのチキソトロピー効果により細胞質基質の硬く冷たい部分を液状化させて筋膜の膜組織を柔らかく弾力あるものに変えることが有効です。

※ これが以前から私が体がしんどくなる(=筋膜が線維化が進み筋がシバかれてつらくなる)と、
  傷ついた動物が温泉で傷や病を癒すように、
  長時間スマーティという遠赤外線ドーム型サウナに入って筋膜の線維化が消えるという回復をじっとまっていたわけです。

 

このような筋膜リリースをするための基礎として押さえておかなければならない知識も、
20年前は筋膜関係の生理学的な学術書は和書で私が知る限り見当たりませんでしたが、今は普通に書店で手に入ります。

先人の解剖生理学研究者たちの愛のこめられた本はすばらしいですよね。