人間は成人するとマンネリ化した動き方しか取れなくなるものです。
動き方の発想が固定化されてしまうことで、
より質のよい合理的な動きをすることが出来なくなるものなのです。
体を動かすときのポイントのひとつ。、
『押す動作をするなら、引く動作をして計算せよ』ことというものがあります。
たとえばサイドブレーキを外した止まっている乗用車を押すシチュエーション。
雪でスリップして抜け出せないようなときです。
自動車は、重い。
重いから必死に押そうとする。
体重が軽い女性には苦労することでしょう。
そうするとついつい自動車に体をあずけるようにしている。
作用させたい気持ちがあるときには、力みが入ってしまう。
ですがサイドブレーキをしなければ、
自動車は動くように創られているんです。
楽に動かす方法を知って押して動かしたことがある人ならば。
もし押す方向へ押そうという力だけを意識していれば、
その力を向けた方向に体が引っ張られて軸が傾斜する。
傾斜しないよう支える力を無意識に発生させているし、
その自らの体が軸を見失った時点で、
力の発力を抑制させてしまっている。
そうならないようにするためには?
作用させたい力の向きに真逆の方向に力のベクトルを計算して作り出します。
その真逆の方向のベクトルは合力によって創りだしてもいいのです。
これは学生当時に学んだ力のベクトルを思い出してください。
そして『作用反作用の法則』のように考えれば、
反作用力を先行して作り出せば作用力は自動的に生じさせることができます。
そう作用させる力を発揮させると、
力みのない動きが作り出されます。
計算しつくされて、
動きを練り出しておれば、
一切の力みも感じないでしょう。
それでいて大変に強力な力を取り出せるのです。
外見上は両者とも同様にみえるような押す動作だが、
水面下で行われている仕掛けにより作用はまったくの別物となります。
体の使い方を熟知していれば、
体の内側の筋力のすべてを怠けさせず使い切り
合力を生じさせ仕事をする工夫をするものです。
なにげないひとつの動作をするのにも、
体のより多くの部位から力を取り出す。
その意識とイマジネーションが大切。
そのような動作に慣れてくると筋肉は大小それぞれ細分化し機能しだす。
使い勝手のよい若く美しい筋肉を作り出し、維持できるようになります。
武術やバレエなどのダンスや他の動きを伴う技芸などでも、
このような質の修練が求められています。
力任せに体軸を見失う力で事に当たれば、
動きの質をよくするために神経の多様さに気付くことが大切。
運動神経や感覚神経が使われていなければ電位が縮小して働きが鈍る。
ときにはしこりがでてしまえば筋骨格系の麻痺が起きてしまうだろう。
そうなれば一生、それらの感覚神経は覚醒することもない。
非常に豊かな神経の広がりを体中に感じられる体験こそが
私には生の充実を約束してくれる大切なものであると思う。