体使いのレベルアップによる好循環へ

まずは、関節を屈曲させるか伸展させるかの違いをチェックしてみよう。


腕の筋肉を使うときに観察できること。


たとえば腕を前に突き出し、肘から先を上に向くように90度に曲げてみる。


そして誰かに曲げた手をしっかりと動かないように強く握ってもらう。


そのときに肘から先を自分に近づけるように屈曲させていくとどうか。


やってもらえればすぐ解るだろう。


一般の方がなにも考えずにやってもらうと
肩はあがり腕が固まって力みが入り、
呼吸がしにくくなる。


関節が折れ曲がる内側の部位が”詰まり”だして可動性も制限され、
曲げるときの方向性の変更も効きづらくなってしまう。
気づけば体全体が硬直し自由度を失った状態に陥る。


それに対して肘から先を自分から遠ざけるように(伸展)するとどうか。


力んだ感じがない。
呼吸も楽にできている。


肘関節をねじったりひねったりすることができるし、
体の重みを握られた手の接点に集めてのせることもできる。
肩の位置は下がり肩甲骨と直結して体幹の力が伝えられる。
重心を容易に移動できるため、
そのまま一歩前に相手側の方へ進めば相手はぐらつくかも。


力みもなくこのような作動が行えて
予想外の強い力が発揮できてしまう。


不思議な感覚を覚えるだろう。


筋肉を伸長させるか屈曲させて力を出すかで様子がずいぶんと違ってくる。


体に疲れをためてしまう緊張しがちな人の動きは体を屈曲させる感じが強く、
筋肉を伸びやかに伸展させて使う習慣がある人は疲れにくい。


筋肉を屈曲させてばかりいる使い方をしてしまうと悪循環がはじまる。
交感神経が強く刺激され体が休めないしエネルギーを過剰に浪費する。
体に疲れが溜まってしまうと心身ともに余裕がなくなりだす。
すると余計に力んだ体の使い方をして屈曲をする癖を強化してしまう。


施術をなさっておられる先生にも、
屈筋の過度な使い方をしてしまうことで
意識も朦朧として体が弱ってしまうものもいる。



悪循環の罠にハマって体を休められず仕事を続け
命を短くする施術をする先生もおられます。
私自身も何度か体験した大変につらい状態です。


それに先日母の友達の施術院を経営していたご子息が、
闘病の末40代でお亡くなりになられました。
施術家ですから人体に対しての感覚や知識は豊富です。
ですが身を粉にして砕き過ぎると気づけば引き返せないところにいた。
そのような話を聞くにつけ、胸を痛める気持ちです。


できればそのような行き過ぎた苦しみを他の方には味わってほしくない。



ただ合気道などをたしなんでいると
体を萎縮させずに伸展させて力を発揮させる技があることに気付くだろう。
そのような力の発力の方法を知っていれば、
その技術を施術のときに応用すればいい。


この伸展させて作業する方法を工夫して深める意識があれば、
施術用法の移り変わりにも対応できるようになる。
このような体を活かして使うためのポイントを押さえた見方ができだせば、
今までは息を詰めて筋肉をオーバーワーク気味に使っていたところが
その後は息を楽にして筋肉よりも自分の体重移動で力に変えられる。


今までは体力が必要な施術法をすれば体がきつすぎるからできなかった。
だからやらないようにしていた。
だがその縛りが緩んで多少無理を押せば多様な施術法を採用できる。
それができるようになったときに
ぱっと目の前に体力不足で抑止していた足かせがなくなり自由を感じる。


気づけば施術の技術を深めるための好循環が徐々に始まりだします。


筋肉の伸展と屈曲のみがわかれば、
すべての足かせが消えるわけではない。


だがこれを知らないで体力勝負をしつづけるのは、
あまりいいことではないだろうと思う。
腕の筋肉を屈曲させて使えば肘が固まり繊細な腕の使い方ができないから。
それでは思い描いた立体的な力のアプローチが難しくなるのかもしれない。


好循環を進めていく道を歩めるように工夫すれば、
悪循環中に感じていた閉塞感が緩んでいくことでしょう。