書籍紹介:『鍼灸の挑戦―自然治癒力を生かす』

鍼灸の挑戦―自然治癒力を生かす (岩波新書)』著者:松田 博公/出版社:岩波書店


鍼灸の挑戦―自然治癒力を生かす (岩波新書)



読んでみると鍼灸の魅力に圧倒さるだろう。


そのひとつを紹介いたします。


=========================
東京、高田馬場で治療院・明観堂を営む奥平明観氏。
「幻肢の感覚は鮮明です。
指も一本一本動くし、ないはずの指でコップをつかむこともできる。
痛みも激しいもので、単なる気分ではない。
西洋医学は見える身体ばかり追いかけてきました。
しかし、人間にはもうひとつ、見えない身体があるのではないか。
幻肢はそれを証明していると思うのです」


といいます。


インド旅行中に右腕を切断した海老原裕之氏にかかわり
長期にわたり幻肢にかかわる実験をしてきた。
実験の場所と計測器は、ソニーの故井深大会長を奥平氏が治療していて
同生命情報研究所が提供してくれた。


海老原氏のなくなった右手のツボに鍼をうつことで変化があるか?
という経過を確認するための実験だった。
”合谷”という親指と人差し指が交差するあたりにうつ。
経脈のエネルギーがとてもつよいツボです。


見えない手を探り鍼をうつのは妙な感じだったろう。


だが変化は劇的でした。


サーモグラフィーを使った計測結果によれば、
体温は施術前より1.7度Cも低下。
しかも合谷の経絡、陽明大腸経をなぞるように胸部から腹部にかけて起きた。
海老原氏の幻肢上の手の痛みも瞬時に取れていた。


=========================


仮にプラシーボ効果で体温が上がったとするなら
陽明大腸経をなぞるように体温変化がおこるものではないのでは?
単純にプラシーボとはいえない再現性のあることだろうと思えます。


とても不思議なお話だと思います。


目には見えないまぼろしの右腕。
そこに肉体はない。


だが幻肢の右腕にも目に見えない経絡のエネルギーラインが存在している。
そこに鍼をうてば目に見える胴体にも影響が波及していくのだから。。。


そう考えると、
目に見える肉体を鍼治療しているだけではない。
目に見えなボディも治療対象にできる。
ということを語っています。


施術の手技に対して大幅な意識転換を迫られる内容かもしれない。


目に見える肉体部分と目に見えない肉体部分。
目に見える肉体部分がダメージを受けていれば、
目に見えない肉体部分もダメージを受けている。


どちらか一方だけを対象として調整するよりも、
その両者を平行して調整していくほうがよい結果が生まれるのでは?


目に見える肉体へのアプローチでのメリットとデメリット。
目に見えない肉体へのアプローチでのメリットとデメリット。
両者のメリットを足して補えば成果は大きくなると思います。


目に見えないボディに確実にアプローチする方法を得れば、
相乗効果をも期待できると思います。


実験のし甲斐のある分野ですね。