左右の足を開いていく意識はどこから始める?

バレエをしておられるお客様が以前におっしゃっておられました。


「子どもの時から、開脚をする子達は、
なんの躊躇もなく180度開脚ができるのよね。
でもさぁ。
大人から始めると、なかなか羞恥心がともなって、開きにくいものという女性も多いのよ」


小さな1歳児が寝ているとき。


赤ちゃん寝相.png


普通に、M字開脚で寝ていたりする。
この姿勢。


意外に呼吸が楽そうだ。


実は、骨盤底筋という骨盤の底面に位置するハンモック状の筋肉は、
腹式呼吸に関係の深いところです。
この骨盤底筋が上下に動くときに、
つられて横隔膜が上下に動き腹式呼吸が始まる仕組みなのですから。


M字開脚では、骨盤底筋が左右にリラックスして開いていますから、
窮屈さのない状態です。


すると、骨盤底筋が一呼吸ごとに、ペコッ、ペコッと上下に動きます。


赤ちゃんは、呼吸筋が未発達ですから、この姿勢にすると呼吸が楽なのでしょう。


赤ちゃんの時の記憶が色濃く残る子どもたちが
180度開脚をするのは羞恥心が邪魔するとか言う問題ではありません。
自然に、そうしていたことですから。


股関節を左右に割って使えるように、
股関節の周囲の筋肉群もつまりや緊張がありません。



ですが大人になると、
180度開脚をしようとするときに、
羞恥心がわき起こることもあるそうです。


それは、どういったときだろうか?



両足を開くというとき。


足の股関節部分を意識して左右に開こうとする人は、
あまり羞恥心を感じるといえるような感覚は起きないかもしれません。
ただ体の中心軸から股関節はすでに恥骨結合から外に向かい4〜5センチも離れているのです。
骨盤の腸骨は足の骨の一部だし、
それも大腿骨よりも脊椎に密接した足を動かすときの優先順位の高いものだと知っているなら、
股関節から動き出しを作るのでは利き足側の軸に関わる部分へ意識が強まってしまうことになる。


左右均等に足を開こうとしているはずが、
どうもしっくりこないということになる。



動き方のルールとして、中心から末端へ動きの力を伝播させ増幅させることというものがあります。


だから両足の中心部分を骨で割って考えれば骨盤の底で見て考えて頂くと、
骨盤底筋の中心に当たる、恥骨と尾骨を結んだライン。
この中心線が左右の足の起こり部分ですから。


この中心線部分から左右に開いて行くような意識をまずもってみます。


すると恥骨結合がゆるみ軽く開いてくれる。
座骨が左右に開き軽く仙腸関節も開き出す。
そのようにして骨盤の内部関節が動きだし、
それから股関節が動き出すという流れです。


ではなぜ、おとなになってから骨盤底の恥骨と尾骨を結んだ中心線を左右に開く感じにというと、
抵抗があるのか?


男性の場合は、肛門部分を少し上に引き上げるようにしつつ左右に分ける程度で済むが、
女性の場合は、女性の外性器があってそこを左右に分けていく感じから足の分ける意識を
したほうがいいいんじゃなかろうかとわかったときに、一抹の不安を感じられるそうです。


「恥ずかしいことをしているのじゃない?」
と。


ただ、優良な練習をしていくうちに骨盤底筋の筋肉群が自在に上下や左右に意識で動かしたり、
呼吸でもそこをコントロールできる友達なんだと気がつき出すと、
そのような羞恥心を感じるよりも、
自分の中心の軸を作り出すための重要極まりない部分だと前向きに捉えられるように意識も変わっていく。


実際、プロのバレエダンサーの骨盤底筋部分を失礼ながら触らせていただいたことがありますが、
自在に上下左右、硬さやしなやかさなど、さまざまな表情を、
服の上からでは決して見て取ることができないところで表現していることに驚きます。


ですから女性が出産をするときに、
会陰部分を十分なほどマッサージしないと
会陰切開をされてしまう競技に馬術がありますが、
それは馬に乗るときに会陰部分で馬の背を捉えるから。
つまり骨盤底の中心線をしっかり馬の背に密着させる。
そして馬の背に当てられて会陰部だけでなく骨盤底部の皮膚層が固く変化してくるのです。


それと同様に、プロのバレエダンサーも会陰部が非常に発達しているので会陰切開を受けないように
しっかりと出産前にマッサージで和らげて置かなければならないといいます。
馬の背中で打ち付けられているわけではないのに、
それと同様なほど自分の意図的な骨盤底筋の動かしで筋肉層を厚くしていくのですから大したものです。


だからそのような骨盤底筋の状態を作り出せる人たちは、
脚部を開脚するときは左右どちらかの利き足側に持っていかれるようなこともなく、
シンメトリーにデザインされた脚部のコンパスの動きが適えられるのです。



そのようなことがありますから、
バレエをし始めた女性に、
「開脚をするときにはどういった手順で開くといいのでしょう?」
と質問をさせていただいて、
「股関節からじゃないでしょうか?」
と返答があることも。
股関節を開くというイメージではあまり羞恥心は起きません。
ですがいくら頑張ってみても股関節が深く正常に入ってくれない。
常に利き足側の股関節の入りが甘い状態での開脚をしているだけ。
それでは練習になりません。


そのようなときには、
多少、説明する側としても羞恥心を煽るようなもので抵抗があるものの、
骨盤底の中心線を左右に動かしていくことから始めてくださいねという。


そのような意識をしていったほうが、
正確に中心から末端へと力の伝達が生じるようになります。
そのようにしていただいたほうが動きの質がいいようです。



このような骨盤の底部分を中心で割って足の左右のコンパスをうまくシンメトリーに分けて使う必要は、
バレエダンサーばかりではなく、
ごく、普通に生活している私達もそのように意識しておいたほうが、
いつまでも骨盤が仙腸関節や恥骨結合が塊化して老化せずに若々しくい続けるために役立ってくれます。


正確に、精密に、自分の体をコントロールするよう心がけたほうが、
脳がどのようにすれば最小の力で最大限の仕事をしてくれるかの計算がかなえられるようです。
そういった意味もありますから、
両足を分けるのは股関節からではなく、骨盤底筋の恥骨と尾骨をむず部中心線の筋肉群からと。
そのような意識をもっていただいて練習してみても面白いのでは。


ぜひ!