『手押し』の続き---2

手押しで圧をかけないためにはどうするか。

そのポイントはいくつかある。

一つは身体の遊びをなくす使い方。
身体の一部分の筋肉だけが働いて、他の大部分の筋肉はその仕事の助けてくれないのでは効率が悪い。
ほとんどの筋肉が遊びだらけだ。
全身の筋肉を一つの作業、たとえば押すプレッシャーをかけるという仕事をするときには協力させる。
協力して各部の筋肉が各々自分に与えられた動きを理解し、別々に使われるようにする。
そのときに遊んでいる筋肉がなくなる。

二つ目は筋力を出し惜しみする工夫。
特に細い筋肉に負担をかける動きを割り出し、それを回避する。
もちろん細い筋肉もしっかりした働きをしてくれることは大切だが、
その筋肉は細いがゆえに大きな負担がかかれば正常な機能は簡単に果たせなくなる。
細い屈筋よりも太い伸筋を利用するためには、という特殊な技術を必要とする。
またより進めば『骨』という疲れ知らずのものの存在を感じ取り、その『骨・コツ』を活かす動きを身につける。
これは難しい。できれば最初は解剖図で主要な骨や筋肉の位置関係を、cm単位でチェックするといい。

三つ目は身体の重さを利用する工夫。
筋力は出せば出すほど疲労する。
だが体の重さは疲労とは無関係だ。
手押しをしないためには身体のバランスを制御しつつ、
自分の体の重さを的確に圧の力に転化させていくことが要求される。
この疲れない力を味方にできるかどうかが、
ワーカーとして最大の武器になる。
ワークは体力消耗戦だからだ。

この重さをかけるためにはワーク時のワーカーのフォームがポイントになる。
美しいフォームを描く方もおられる。

圧をかけるときのワーカーの『手』なのですが、
ワーク中、手の存在感は消えます。
手で押すのではなく、手以外の筋力や重さ(体重)を意識するところが大きいためでしょう。
手の存在感は僕の意識の中から忽然と消えます。
手は身体の状況を把握するための『センサー』であり、
クライアントの身体と僕の身体をつなげるための『クッションの役割』になります。
クッションの役割にするためには、ワーカーの肩や肩甲骨の使い方と手の力みのない使い方が必要になります。
クライアントに瞬間圧がかからないように調整するものとして利用します。
そうすることにより安全性を確保していくのです。