「手押ししちゃダメよ!」と、
施術法をお伝えするときに解説をすることがあります。
手押しを避けるべきだというのは、
手押しをし続けると、
施術者の体が確実に体の偏りが年々強まり、
いずれ自分でそこから抜け出すことができないような体を壊すことになりかねない。
そうなってほしくない。
私も別に誰かに手押しはとか教えてもらったことはないんです。
でも、自分の体が不具合が出て必要に迫られて、
自分で工夫して、こうすれば手押しから抜けられるのではというアイデアを、
いつくもいくつも考えだして実戦。
そのうちのひとつをご紹介します。
ではでは。。。
「手押しといわれても、それって何?」ということもあります。
簡単な実験です。
まずは小手先の手押し風パンチを繰り出してもらいましょう。
では、ちょっとしたボクシングのまねをしてみましょう。
たとえば女性のAさんに協力をお願いして。
今までボクシング経験なし。
でも右手でストレートパンチ!
利き手の右手ですから、
小気味良くさっと出る。
ビシっと決まる感じで、
パンチを出す実感あり。
左手でストレートパンチ!
利き手ではない左手です。
なんだか心もとない感じ。
ヘナヘナっとした出方で、
力が出ている実感もない。
つまり利き手と利き手ではない手では、
まったく違った使用感覚になりますね。
でも私ども施術者で圧をかけるものは、
左右の手で同じように同程度の高い精度で圧をかけなければいけない。
100回圧をかけたとして、100回まったく同じことが精密機械のようにできることが必須だ、
と合気柔術の師範もいっておられたといいます。
そのように施術者も、身体のさばきをしていくべきだと思います。
なぜ利き手側と利き手側ではない手では、
使い勝手が変わってしまうのでしょうか?
体に中心軸という軸を設定して考えてみよう。
ここをコマ軸というような、
コマの中心棒のようなイメージでもいい。
中心軸を意識して動きを作り出せばいい。
利き手側が動かすのが得意だからとか言っているうちには、
すでに左右のばらついた動きしかできないということです。
利き手側に意識が偏ればそちらに傾斜して倒れていく感じ。
反対側の利き手以外が感じ取れない統一できていない体だ。
意識が体の一部にまばらになっているなら中心軸が置けず
左右軸のどこかを仮設中心軸として緊急避難的に設置する。
それが続けば、いつしか曲がった左右軸を中心だと感じる。
そこから抜けだしていきたいところです。
では、中心軸を意識して!
それで右手でパンチ!左手でパンチ!
してみたところで、
先ほどとそんなに変わりませんよね。
正確に、この中心部分から動き始めを執り行う感覚が必要です。
単純に、ここが中心部分だと思ったとしても、
それだけでは心に刺さるほど意識が止め置けないかもしれない。
とりあえず基本的なイメージですが、
パンチを打つ相手が目の前にいるとします。
その相手を、イメージの力で自分のおへそに近づける感じに。
ピッタリと自分の腹にくっついた感じに意識していただければなおよし。
自分の腹にぴったっとひっつけた相手を手で何かしようとせずに、
自分の腹にくっついた接触面をうまく摩擦させる。
接触面のマークとしておへそを使うのも手でしょう。
そして相手を左右にこすると相手の重心を奪える感じにします。
するとおへそが左右に振れるとき、
自分の肩が自然に中心軸を真ん中に捉えた状態で回り出します。
そのときにパンチを打とうという意識をなくし、
軽〜く拳を握り相手に向けて繰り出します。
すると「バチーン!!」と重いいい音がする。
そして「イテテテ」と、先ほどとは比べることができない衝撃。
この打ち方をされると私がビビってしまい腰が引けますからね。^-^;
でも打っているAさんは、軽くしか当てているつもりもないが、
なんだか不思議な事が起きるなと。。。
実際は、何も事前知識なしにパンチを打ってもらったときは、
胸を固めて動きを止め、
三角筋より先が動く程度だった。
へそを相手にひっつけたイメージでこすった感じのときは、
自然に打った側の手が広背筋からしっかり伸び使えていて、
おまけに反対側の手が素人にもかかわらず引き手で威力を
かなり増加させていることもわかるだろう。
これは威力が増すという話のように思えるかもしれない。
へそで相手のイメージをこすって摩擦で動かす力の調整やこする量や角度などを調整することで、
威力の程を調整しながら意図的な力を取り出すこともできるようにトレーニングすればいいので。
それには、修練が必要ですね。
でもそれだけにとどまらない。
つまり利き手側で打ったときと利き手側ではない側で打ったときの、
パンチの質の差が非常に小さくなっていることがポイントなのです。
私ども施術者は、側臥位で頭側へ向けて圧をかけるときに、
右側はうまく力が乗るが左側はダメなんだよなというのは、
良い成果をコンスタントに打ち出すことはできなくなる。
何度でも精密に左右とも同じ動けるようにしていきたい。
これはやってみるととても難しいことだと実感します。
ですがこのような腹で動きをつけると中心軸の回転角度や角速度で、
正確に末端の手先部分の動きを制御できるように訓練しやすくなる。
まるで円をえがくコンパスのようなものでしょう。
動きのブレが少なく、美しい流れを持つものです。
以上、実際には文章で伝えるには難しいところで、
言葉足らずなところがあったでしょう。
実演されなければ解らないとも思います。
ただ、各人、工夫して圧のかけ方に磨きをかけて、
過酷な施術労働の負担を軽減することができると
そのようなことを願っている次第です。