鼠蹊部のしこり図より

鼠蹊部にしこりができている人がおられます。


そのときに一様に言葉が出るのですが、
『これは骨盤じゃないのですか?』
とおっしゃられることも多い。


でも骨はもっと奥の方にあるものです。


下図を見てください。
人の骨盤を右側真横から眺めた図です。
そして鼠蹊部分だけ筋肉など詳細を書き込みました。


sokei-bu.jpg


腸骨筋-大腰筋-恥骨筋という三本の筋肉がありますよね。
鼠蹊部のスペースはこの三本の筋肉に占められています。


骨盤の開き具合はこれら三本の筋肉が制御する機能を持ちます。
この筋肉が硬化して動かなくなれば骨盤の制御はできなくなる。
骨盤の前面の筋肉達の物理的な筋弾性を失う状態ですね。
すると骨盤の前後にある筋肉を伸ばしたり縮めたりして
骨盤を制御ができなくなる。


鼠蹊部の大きなしこりを見つけた時点で、
骨盤の繊細なコントロールを要求しても困難です。
体の使い方を伝えるときには、
このような前提条件を把握して伝えています。


筋肉は弛緩すれば柔らかいものです。
柔軟性ある鼠蹊部の持ち主を触れば、
細い鼠蹊靱帯の下はまるで空間のよう。
『ずぶずぶっ』と『ささぁっ』と奥へ指が滑り込み、
骨盤の骨の部分まで届いてしまう。
これが理想。


ですが腸骨筋が硬くなりすぎていて奥にまで指が届かない。
大腰筋や恥骨筋も同様に硬い。
しこりが石と化して指がはじかれる。


骨盤の骨部分と鼠蹊靱帯という硬質なものにはさまれている。
ここは条件的に強烈な癒着が起こりやすいポイントなのです。
『石と化して』しまうという表現は一切誇張ではありません。


大腿直筋を歩行のときに使う歩き方をする人の多くは、
鼠蹊部が強い固まりと化します。
ちょっと人の歩き方を見て、
膝の使い方をみて鼠蹊部のしこり具合がイメージできる。
職業的なモノの見方が染みついてます。^-^;



そうなると困ったことが起こります。


大腿神経を圧迫する。
そうなれば大腿四頭筋が弱化が顕著。
足が上がらなくなるだろう。
晩年足が不自由となるとき。
足をあげたつもりなのにあげられていないことに驚いたとき。
少しだけ気になるかもしれない。。。


それに大腿動脈を圧迫して脚部に血液を送りづらくする。
血管なんかは単なるチューブでしかない。
チューブの途中を押しつぶせば押された部分で水流は妨げられてしまう。
脚部に流れるべき血液の多くが鼠蹊部で止められる。
そのため脚部の血流が悪化して脚部末端冷え性となる。


大腿動脈を圧迫すれば腹部大動脈部分を経由して
脚部に流れるべき血液が流れずに腹部に滞る。
この溜まりは内臓を圧迫してしまう。
そのため腹部から強い心拍を感じることにもなる。
女性が重い生理痛が生じる大きな原因の一因となることもあるのです。
(鼠蹊部の緩みがかなって生理痛を感じなくなるうれしい報告もあります)


大腿静脈を圧迫することにより静脈瘤になることもある。
これも働き盛りの男性には気になるところだと思います。


ただこの鼠蹊部のしこりはかなり深くまでもぐり込むところです。
なかなかセルフマッサージで解くのが難しい。
プロの方でも大腿神経に痛さが触るため、
あまり手を付けずにいることもあるようです。
無理やりマッサージをしたりすれば腫れたりもします。
だからセルフでおこなうマッサージは
オイルを鼠蹊部にまぶして緩める程度にしたほうが無難。
強く押し解こうとは絶対考えないようにしてくださいね。


リリースするための簡易方法があります。
仰向けに寝た状態になり
バランスボールや椅子に足を持ち上げて乗せる。
この状態を3分以上キープするといいでしょう。
腰の部分が床に着く感じとなればベターですね。
そして足を下ろすときには、
一気にえいっと力を入れて戻ってはダメです。
15秒程度かけてゆっくりとちょっとずつ椅子等から下りてください。
下りたら1分程度はそのままゆっくりとしておきましょう。
各人の体の様相は異なるので、
どれくらいの期間これを続ければよいかは明言できません。
このやり方のよい点は簡単かつ安全性が高いし成果もある。