深層部分まで解けなければわからないこと

大腿骨は、よーく観てみると、L字型になっています。


股関節部分に入っている臼状関節面。
そこから膝頭まで垂線を引く。
うまくたっているときには、
その垂線は脛骨へと直線で結ばれる。


このときの垂線は、眼に見えないけど、
しっかりと作用している目に見えない骨なのです。
物理学的な見えないけど力が働く骨がそこにある。


大腿筋膜張筋や大腿直筋*外側広筋などばかりを使って立つ癖がある方に、
立ち方をアドバイスするときには、
内転筋をもっと使っていく意識を持とうというのは適切です。
だが実は目に見えない大腿骨のもういっぺんの骨があるので、
この骨の存在に気づけば、内転筋をぎっちと強すぎるほどに
固めてしまうのは誤りだと気づくでしょう。


内転筋は、バレエで言うところのアンディオールという、
大腿骨をうまく外転させるための螺旋を描かせるために
重宝する筋肉なんです。


うまく大腿骨をねじねじさせることができると、
先ほどの股関節から膝頭までの垂線は、
まっすぐ脛骨のなかを通って下まで貫ける。


すっきりした絵が見えてきますよね。
このときにはじめて膝の中の半月板が地面に対して水平になり、
この半月板も地面に対して水平を図るための隔膜だったのだと気づくでしょう。


この感触を得られると、
足の骨が使え出します。


以前にひとりのお客様にこのようなことを解説したことがあります。


そのとき、お客様はふむふむと頷いておられました。
ですが先日、繰り返しになるけれど聞いてくださいといい、
人体骨格模型「小山さん」を使って上述の解説をしました。
そのお客様は以前よりも、遥かに体の芯がいい調子になってきたバレエをしている方です。


そしてこの度、解説を聞いて、聴きながら自分の体の中をモニタリングして、
言われている状態ができるかどうか確かめられていた。
そうしてできるようになっていたのでしょう。


そのときお客様がいうのは、
「以前も同じ事を聞いた記憶があるが、あのときは正直あまり意味がピンと来なかった。
だが、今の自分の体だったらいわれていることがわかる。」



そういえるほど、そのお客様の体は今までにない仕上がりでした。
これならわかるよね、という感じは私にも見えていましたから、
再度、説明した次第です。^-^)




体についての解説は、
体がまだその知識を聞くための準備ができていないときには、
単純に物理的な仕組みを羅列するだけでは自分の体とは遊離した関係性の薄い知識でしかない。


体がすでにその知識を聞くための準備ができているときには、
聞いたことを自分の体の中で体現させてみて、その体験が腑に落ちる。
そうするとその後の自身の道具としてその知識が活用できるようになる。


体が十分深層部分まで溶けていなければ、
このようなアライメントを精密に整えていく感覚を操れないため、
たとえ正しい知識でもさほど即効で効果をえられるような変化は起こり得ないことが多い。



体ができてなければ頭でわかっても自分には役立てられない歯がゆい知識というのが、
多くの体を使うときのアドバイスに入り込んでいたのならば。
そうなると、やはり、体の使い方を教えられても面白くない。
そんなような話を聞くだけ、自身の生活が豊かになる実感なし。
それでは時間の無駄を強いられている気持ちになるものでしょう。


私自身も、そのようなフラストレーションを多く抱えてきた一人です。


だからそのことが身にしみてよくわかります。


体の使い方を習うときには、
それを支える土台が大切だ。


たとえばフェルデンクライス・メソッドを数年習っていた方が、
施術で深層部分まで解かれたときに、
どんなに先生があなたは変な体の使い方をするねといわれても
その意味がわからなかったが、
深層部分まで解かれたら初めて気づいたという。


深層部分に動脈が通っているのでここが硬ければ血が十分に送られず酸欠状態で知覚神経の多少の麻痺は免れない。
神経も控えているような大関節が問題があるならば、
それはなおさらだという状態になってしまう。


そのような状態で、精妙な動きを感じ取り、感覚でよりよい動きへと導かれようとすることは、
相当にすでに動きの要諦を熟知しているものでない限りできることは、まず難しいだろう。
もちろん、長い年月をかけて、少しずつ気づきを増やしていくことで、
動きの質の改善はなされていくものですが、
ときには腰痛でヘルニアなどを患っていて、
手術までの日時が迫っているというひとも。
そのようなときには、深層部分をしっかりリリースして、
それから動きの再度教育をしていくと改善効率が優れてくる。


そのようなケースを、私は観てきたことがあります。



特に大腿骨の見えない骨をみつけられるかどうかで、
バレエをしている人は大転子に意識をおいて対処している人などは、
その間違いに気づいてはっとすることでしょう。
そして、それがわかったら、自分の体の中の内部感覚が、
がらがらっと音を立てて変わったことに気づくでしょう。


人は、自分の体を作動させるための地図を持っています。
その地図をもとに動きを作り出し、
地図を書き換えることで動きの質を向上っせることができる。
そのような人体地図の存在に気づいて、
その地図に見えない大腿骨の骨を付け加えてくださいね。